人手不足な中小・ベンチャー企業だからこそ実現できる!優秀人材を獲得する採用戦略とは?

中小企業やベンチャー企業が今、深刻な課題として直面しているのが「人材の確保」です。2024年の帝国データバンクの調査によれば、**人手不足を感じている企業は全体で正社員51.7%、非正社員29.5%**という結果が出ています。特に「情報サービス業」では70.2%と高く、「飲食店」では64.3%が非正社員の人手不足を訴えています。
中小企業は、知名度や福利厚生、給与面で大手企業に比べて劣ると見なされがちです。しかしそれでも、企業の成長には人材が不可欠であり、ただ手をこまねいているわけにはいきません。では、このような状況の中で中小企業はどのようにして優秀な人材を採用していくべきなのでしょうか。
この記事のポイント
- ✅ 独立志向人材の活用
将来独立を目指す優秀な人材をあえて採用し、成長機会を提供する戦略を紹介します。 - ✅辞めても終わらない関係
退職後も外部パートナーとして協業できる関係性を築くことで、人材価値を継続活用します。 - ✅ 中小企業だからできる柔軟性
制度や文化の制約が少ない中小企業だからこそ実現できる採用とキャリア支援の仕組みです。
大企業にはない「独立志向人材」を採るという選択肢
多くの中小企業では「大手と比べてうちは魅力がない」と感じ、採用活動に消極的になってしまう傾向があります。しかし実際には、大手企業ではアプローチしづらい優秀な人材層が存在します。それが「独立志向を持つ人材」です。
独立を視野に入れている人材は、いずれ起業したい、自分のサービスを持ちたいと考えています。このような人材は、成長意欲が高く、自主的に行動し、責任を持って仕事に取り組む姿勢が強い傾向があります。つまり、まだ実績が少なくても「優秀な人材になる素質」を持っているのです。
大企業ではこうした人材は「浮いてしまう」可能性もありますが、中小企業やベンチャーではそのエネルギーを歓迎し、うまく活かすことができます。だからこそ、「独立志向の人材を積極的に採用する」という選択肢が、新たな戦略として有効なのです。
なぜ独立志向の人材は「優秀」なのか?
独立願望=成長志向の表れ
「いずれは独立したい」と考える人材は、単に現職に不満を抱いているのではなく、「もっと成長したい」「自分の裁量で仕事をしたい」という強い意志を持っていることが多いです。こうした人材は、企業の中でも高い自走力を持ち、周囲を巻き込みながら成果を出す傾向があります。
さらに、経営的な視点を持つことを目指しているため、売上や利益、顧客満足度といった視点でも仕事を捉える習慣が身についています。これは非常に貴重な資質であり、従来の「言われたことをやるだけの人材」とは一線を画します。
実際、経営者にとって理想の人材像とは、「手放したくないが、いずれは独立してもおかしくない」と思える存在ではないでしょうか。そのような人材を採用できるチャンスが、「独立志向の人材」を狙うことで広がるのです。
離職は終わりではない:協業パートナーとしての関係性
辞められるのではなく、つながり続けるという考え方
一般的に、社員が「辞めたい」「独立したい」と言ってきたとき、多くの企業では「引き留める」か「見送る」かの二択で対応します。しかし、これからの中小企業が採用で勝ち残るためには、そのような二元論から脱却する必要があります。社員の独立は「終わり」ではなく、「新しい関係の始まり」と捉える視点が必要です。
たとえば、数年間企業でスキルを積んだのちに独立した人材と、業務委託やプロジェクトベースで再び関わるという協業関係は、今やIT業界やフリーランス業界では一般的なものとなっています。社員時代に自社の文化やビジネスを理解している人材は、外部協力者として非常に心強い存在になります。
このように、採用の段階から「独立後もつながれる関係性を築く」という視点を持っていれば、離職=損失ではなく、離職=資産化という考え方に転換できます。これこそが、今の中小企業が採るべき新しい採用戦略なのです。
採用時から「独立前提」で関係を築くという発想
最初から「辞めても終わりじゃない」と伝える
従来の採用活動では、できるだけ長く働いてもらうことを前提にして求人を行うのが一般的でした。しかし、独立志向のある優秀な人材に対しては、その前提自体を見直す必要があります。彼らにとって重要なのは、「成長できる環境」と「将来の独立も支援してくれる組織」であるかどうかです。
この視点を採用活動に取り入れるには、「独立を前提にしてもよい」「その後もパートナーとして関われる」といったメッセージをあらかじめ伝えることが効果的です。これは、大手企業ではなかなか取りづらい姿勢であり、中小企業だからこそ可能な戦略です。
たとえば面接時に「当社で経験を積んで、将来的には独立も視野に入れていいですよ。その時は一緒に仕事を続けましょう」と語れる経営者は、求職者にとって非常に魅力的に映ります。独立を応援することが、逆に長期的な信頼関係の構築にもつながるのです。
中小企業だからできる:独立支援型のキャリアパス
大手では難しい“出口戦略”の柔軟さ
大企業では制度が画一的で、社員の独立支援を前提としたキャリア設計や人事制度が組み込まれていないことが多く、個別に柔軟な対応を行うのが難しいのが実情です。一方で、中小・ベンチャー企業であれば、組織の柔軟性と経営者の判断次第で、個別にキャリア支援を組み立てることが可能です。
例えば、「3年で独立したい」という社員に対して、その期間中に必要なスキルや人脈、取引の仕組みを経験させるようなジョブデザインをすることもできます。さらには、独立後の業務委託契約や協業プロジェクトの構想を、在職中から共に話し合うこともできます。
このようなキャリアパス設計は、中小企業にとっては「優秀な協業者の育成」であり、社員にとっては「安心して独立できる環境の提供」となります。結果として、お互いにとってリスクを最小限に抑えたwin-winの関係が構築できるのです。
実際にどのような人材にアプローチすべきか
「独立志向のある人材」と一口にいっても、誰でも良いというわけではありません。中小・ベンチャー企業が注目すべきなのは、自己成長意欲が高く、職種に対する専門性を伸ばしたいと考えている人材です。たとえば、エンジニア、デザイナー、マーケター、コンサルタントなどは比較的独立しやすく、将来的なパートナーとしても有望です。
また、地方自治体やスタートアップ系のイベント、クラウドワークス、Wantedly、noteなどで情報発信している人の中には、潜在的に独立志向が高く、企業での経験を求めている層も多く存在します。こうした人材は、大手よりも自分を活かせる場所を探していることが多いため、アプローチの価値があります。
つまり、採用対象を「いずれ辞めるかもしれないから除外」ではなく、「辞めたあとも一緒に働けるかもしれないから歓迎」という視点で再定義することが、現代の中小企業採用には必要なのです。
経営者が伝えるべきビジョンと“出口戦略”
ビジョンを持つ者同士の信頼が、関係を強くする
独立志向の人材は、自分の未来を真剣に考えている分、働く場所にも「共鳴」を求めています。だからこそ、経営者が自社のビジョンや理念を語ることは極めて重要です。ただ業務内容や待遇を伝えるだけではなく、「何のためにこの事業をやっているのか」「社員とどのような関係を築きたいのか」という姿勢が問われます。
また、出口戦略としての独立支援を採用時から提示できれば、「この会社に入れば、次のステージにもつながる」と感じてもらえます。結果的に、採用の間口が広がるだけでなく、短期的な離職も減り、信頼関係の中でキャリアを積む人材が増えるのです。
経営者自らが言葉で未来を描き、共鳴できる人材を集めることが、採用の本質といえるでしょう。
独立支援型採用を実現するための具体的な方法
制度よりも“文化”として根づかせる
独立志向の人材との協業関係を築くためには、採用段階から「辞めても関係は終わらない」という価値観を共有することが不可欠です。実際には、面接やキャリア面談で将来の目標を話し合い、「独立しても、パートナーとして関わってもらえると嬉しい」と伝えることが効果的です。
また、在職中に必要なスキルやプロジェクト経験を計画的に提供し、将来的な協業に備えることも重要です。例えば、特定のクライアント業務を一貫して任せる、見積や提案業務に参加させるなど、経営的視点を自然と持てる環境を用意するとよいでしょう。
さらに、退職後に備えて契約やNDAの仕組みを整えておくことで、業務委託やコラボレーションが円滑に進みます。こうした制度よりも「文化としての継続関係づくり」が企業の信頼を高める鍵になります。
信頼とビジョンの共有が採用の質を高める
経営者が示す“未来”に人材は惹きつけられる
独立志向の人材は、自らのビジョンを持つことが多いため、受け入れる企業側にも“共鳴できる思想”が求められます。待遇や仕事内容だけではなく、「この会社と関わり続けたい」と思えるような未来像を語れるかどうかが重要になります。
たとえば、採用段階から「どのように社会に貢献したいか」「5年後にどんな協業の形があり得るか」といった問いを交わすことで、応募者との関係がより強固なものになります。信頼関係に基づく採用は、結果として早期離職の抑制にもつながります。
まとめ:“採って終わり”ではない、中小企業の新しい採用戦略
「関係性で採る」が、次代の常識になる
人手不足が続く中、採用の目的は「埋めること」から「つながること」へと進化しつつあります。特に中小・ベンチャー企業では、大企業のような条件ではなく、人と人との関係性で差別化を図る必要があります。
独立志向のある人材をあえて採用し、将来的に協業パートナーとしての関係を見越すことで、「辞められるリスク」を「価値の継続」に変えることができます。採用から退職、そしてその先の協業までを含めた設計こそが、中小企業の新たな採用戦略と言えるでしょう。
また、この採用戦略は特別な投資を必要としていない点も中小、ベンチャー企業にはローコストでハイパフォーマンスが期待できる優れた採用戦略とも言えるでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 独立志向の人材とはどんな人ですか?
将来的に起業やフリーランスとして活動したいと考える成長意欲の高い人材です。
Q2. 独立された後に協業するにはどうすればいいですか?
在職中から信頼関係を築き、退職後も業務委託契約やコラボレーションの枠組みを整えておくことが大切です。
Q3. 独立支援を採用時に伝えても応募はありますか?
成長機会を重視する人材には魅力的に映るため、共感を呼ぶ可能性が高いです。
Q4. どのような職種に向いている戦略ですか?
エンジニア、デザイナー、マーケター、コンサルタントなど独立しやすい専門職に向いています。
Q5. この戦略は大手企業ではできないのですか?
制度的・文化的な制約が多く、個別に柔軟対応できる中小企業だからこそ実現しやすい戦略です。
投稿者プロフィール

- エグゼクティブコーチ/経営コンサルタント
-
1968年生まれ。兵庫県出身。
玩具業界(商社)、映画業界を経て人材サービス業界で20年働く。
代表取締役として年商10億円台の人材サービス会社を70億円台まで成長させる。
経営の傍らで多くの経営者と交流し、中小企業の社長の立場でコーチング、コンサルティング実績を積む。
現在はエグゼクティブコーチ/経営コンサルタントとして活動中。
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