
以前の私は毎年2月、3月になると憂鬱な気持ちになることが多かったと記憶しています。
その理由は、4月に実施される入社式の講話の原稿を考えなければいけないからです。
基本的には時事ネタを引用する形で原稿を考えるのですが、この講話の原稿の元ネタになる時事ネタを探すのが一苦労です。
あまり堅苦しい時事ネタでは、新入社員は話の途中で眠くなってしまいますから。
できるだけ、新入社員も身近に感じる時事ネタを元にして、何かのメッセージを伝えることができる時事ネタを探す。
私と同じように講話の時事ネタを探すのに苦労している社長向けに、2026年の入社式で使用できる講話の時事ネタをお伝えします。
時事ネタ1:「大阪・関西万博のキャッシュレス運用」から考える、仕事を「イベント」で終わらせないという視点
時事ネタの概要
2025年10月13日に閉幕した大阪・関西万博では、「完全キャッシュレス運用」が大きな特徴の一つでした。
会場内での支払いは、原則として現金を使わず、電子マネーやQRコード決済、クレジットカードなどに限定されていました。
万博終了後には、来場者の動線や決済スピード、混雑の発生箇所、トラブル対応などを含めた運用面の検証結果が整理され、大規模イベントを“実験場”として使い、その結果をデータで振り返るという姿勢が改めて注目されました。
重要なのは、万博が「成功したかどうか」ではなく、何を試し、何が分かり、次にどう活かすのかが明確に言語化されている点です。
(参照元:expo2025.or.jp)
講話用時事ネタの選定理由:仕事の構造を説明しやすい事例
●「仕事の構造」を語る題材として分かりやすい
私がこの時事ネタを社長講話の題材として選びやすいと感じた理由は、大阪・関西万博のキャッシュレス運用が、仕事の基本構造を非常に分かりやすく示しているからです。
万博の運営は、
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事前に設計を行う
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想定外が起きることを前提にする
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現場で調整しながら運用する
-
終了後に事実とデータをもとに振り返る
という流れで進められています。
これは、イベント特有の話ではありません。中小企業の日常業務も、実はほぼ同じ構造をしています。
経営の現場では、
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最初から正解が見えている仕事は少ない
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会議で決めた通りに現場が動くことの方が珍しい
-
実際にやってみて初めて、課題が浮き彫りになる
という場面が繰り返し発生します。
万博のキャッシュレス運用は、「失敗しない仕組み」を作った事例というよりも、学び続ける前提で設計された仕事の好例だと捉えることができます。
入社式の社長講話でこの話題を扱う意味
この時事ネタを、入社式の「社長講話」という場で使う意味は、万博の話を伝えたいからではありません。
入社式は、具体的なノウハウや細かなルールを教える場ではなく、仕事を見る際の前提となる考え方を揃える場だと私は考えています。
社会人になると、
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正解を当てること
-
失敗しないこと
よりも、
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なぜそうなったのかを考えること
-
次に活かせる形で経験を残すこと
の方が重要になります。
しかし、多くの新入社員は学生時代の延長で、「うまくできたか」「失敗したか」という結果だけで仕事を捉えがちです。
そこで入社式という最初のタイミングで、仕事とは一度きりのイベントではなく、経験を蓄積して“型”にしていくプロセスであるという視点を共有しておきたい。
そのための題材として、大阪・関西万博のキャッシュレス運用は非常に使いやすいと感じています。
社長講話を通じて新入社員と共有したい仕事の考え方
仮に私がこの話題を入社式の講話で使うとすれば、意識したいのは具体的な行動を指示することではありません。
伝えたいのは、次のような考え方です。
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一度うまくいったかどうかよりも、再現できるかどうかが重要
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失敗そのものより、振り返らないことの方が問題
-
経験は、言語化して初めて会社の資産になる
万博が「やって終わり」ではなく、検証結果を次につなげようとしているのと同じように、会社の仕事も、一つひとつを積み上げて自社のやり方=型にしていく。
社長講話は、その前提となる仕事観を共有するための場です。時事ネタはあくまで、その考え方を伝えるための材料にすぎません。
大阪・関西万博の事例は、中小企業の仕事の本質を語るための、分かりやすい入り口として使える題材だと考えています。
時事ネタ2:「AI音声・ディープフェイク詐欺」から考える、「正しさ」よりも「確認」を重視する仕事の姿勢
時事ネタの概要
生成AIの進化により、本人の声や話し方を精巧に再現した音声を使った詐欺が、現実の犯罪として日本でも報じられるようになっています。
警察官や企業の担当者を装い、電話やオンライン通話で「至急対応が必要」「今すぐ振り込んでほしい」と迫る手口は、従来のなりすまし詐欺よりも見分けがつきにくい点が特徴です。
2026年1月には、AI技術を使って日本人の声を再現したとみられる詐欺事件で、海外拠点のグループが摘発されたことが毎日新聞で報じられました。
この事件では、声や話し方が自然であったため、被害者が不審に思いにくかった可能性が指摘されています。
また、ASCIIなどの国内メディアでも、生成AIがサイバー犯罪の手口を高度化させている現状が解説されており、「それらしく聞こえる連絡」そのものが、もはや安全の根拠にならない時代に入ったことが示されています。
この時事ネタの本質は、AI技術そのものよりも、人が判断する際の前提条件が大きく変わってしまったという点にあります。
(参照元:mainichi.jp / ascii.jp )
講話用時事ネタの選定理由:仕事の構造を説明しやすい事例
AI音声・ディープフェイク詐欺が講話の題材として適している理由は、この問題が「ITリテラシー」や「防犯意識」の話にとどまらず、仕事の基本構造そのものを浮き彫りにしているからです。
多くの仕事は、次のような前提の上で進められています。
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相手が誰であるかは、ある程度信用できる
-
これまで問題がなかったやり方は、今回も大丈夫だろう
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急ぎの案件ほど、スピードが優先される
AI音声詐欺は、こうした前提が一気に崩れる例です。
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声が本人らしくても、本人とは限らない
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もっともらしい理由が、正しいとは限らない
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急いでいる状況ほど、冷静な確認が必要になる
これは詐欺に限らず、日常業務でも同じことが言えます。
慣れた取引先、過去にトラブルのなかった業務ほど、思考が自動化しやすく、確認がおろそかになりがちです。
AI音声・ディープフェイク詐欺は、「いつも通りに処理する仕事」の危うさを説明する題材として、非常に分かりやすい事例だと考えています。
入社式の社長講話でこの話題を扱う意味
仮に私がこの話題を入社式の社長講話で扱うとすれば、目的は「詐欺に気をつけなさい」と注意を促すことではありません。
入社式は、業務マニュアルを教える場ではなく、仕事に向き合う際の前提となる考え方を共有する場です。
社会人になると、
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正しい判断をすること
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早く処理すること
が評価されやすくなります。しかし、その前段階として、
-
本当にこの判断で良いのか
-
確認すべきポイントは残っていないか
を立ち止まって考える姿勢が欠かせません。
AI音声詐欺の事例は、「疑うこと」が目的なのではなく、確認することが仕事の一部になった時代に入ったことを、非常に象徴的に示しています。
社長講話を通じて新入社員と共有したい仕事の考え方
この時事ネタを通じて新入社員と共有したいのは、疑い深くなることではありません。
むしろ、次のような仕事の考え方です。
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正しさよりも、確認を優先する
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判断の速さよりも、判断の根拠を重視する
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一人で抱え込まず、プロセスとして確認する
経営の現場では、一度の判断ミスが、そのまま会社の信用に影響することも珍しくありません。
だからこそ、
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急いでいる
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もっともらしく聞こえる
-
これまで問題がなかった
といった理由だけで判断しない姿勢を、社会人のスタート地点で共有しておくことには意味があると考えています。
AI音声・ディープフェイク詐欺は、「正解を当てる仕事」から「前提を確認する仕事」へと、仕事の性質が変わってきていることを伝えるための、非常に分かりやすい時事ネタです。
時事ネタ3:コメ価格の上昇から考える、「節約」ではなく「価値」を起点に考えるという視点
時事ネタの概要
2026年1月、国内で販売されているコメの平均価格が、5キロあたり初めて4,400円台に達したことが報じられました。
これは、全国のスーパーなどで販売されているコメの平均価格を集計したもので、従来の水準を大きく上回る数字です。
価格が一時的に上がっているのではなく、なかなか下がらない「高止まり」の状態が続いている点が指摘されています。
その背景として、生産コストの上昇だけでなく、流通構造の複雑さや、農家と消費者の距離が見えにくい仕組みそのものが課題になっていることが紹介されています。
また専門家のコメントとして、今後は「安く大量に流通させる」仕組みだけでなく、流通を可視化し、農家と直接つながる取引を広げていくことが重要になるという見方も示されています。
コメという日常的な食品の価格上昇を通じて、「なぜ値段が上がっているのか」「どこに価値があるのか」という視点が、生活者にも突きつけられている状況だと言えます。
(参照元:topics.smt.docomo.ne.jp)
講話用時事ネタの選定理由:経済の変化を生活実感に落とし込める題材
コメ価格の上昇が講話の題材として使いやすい理由は、この話題が経済の話を、生活の話として捉え直せる点にあります。
為替、物価、原材料費といった言葉は、どうしても抽象的で、自分とは関係のない話として受け取られがちです。
一方で、
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毎日食べるもの
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スーパーで価格を見てすぐ分かるもの
についての値上がりは、誰にとっても「実感」を伴います。
経営の現場でも同じで、数字や理屈として理解していることと、実感として腹落ちしていることの間には、大きな差があります。
コメ価格の上昇は、経済の変化がどのように生活や行動に影響するのかを説明する題材として、非常に分かりやすいと感じています。
入社式の社長講話でこの話題を扱う意味
仮に私がこの話題を入社式の社長講話で扱うとすれば、「物価が上がって大変だ」という話をしたいわけではありません。
入社式という場は、目の前の現象にどう反応するかではなく、物事をどの視点で捉えるかを共有する場だと考えています。
物価が上がったとき、私たちはつい「節約しよう」「我慢しよう」と考えがちです。
しかし経営の視点では、
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なぜ価格が上がっているのか
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それでも選ばれている理由は何か
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値上げしても支持される商品・サービスとは何か
といった問いを立てることの方が重要になります。
コメ価格の上昇は、「安さ」だけで選ばれる時代が終わりつつあることを示す、象徴的な事例でもあります。
社長講話を通じて新入社員と共有したい仕事の考え方
この時事ネタを通じて新入社員と共有したいのは、「節約すること」ではありません。
伝えたいのは、
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コストが上がる時代に、どう価値を生み出すか
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価格ではなく、理由で選ばれる仕事とは何か
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付加価値をつくる側の視点を持てているか
という考え方です。
経営の現場では、
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仕入れが上がる
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人件費が上がる
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外注費が上がる
といった状況は、今後も続く可能性があります。
その中で重要なのは、「我慢する」「削る」ことではなく、それでも選ばれる価値をどう作るかを考え続ける姿勢です。
コメ価格の上昇という身近なニュースは、仕事においても「値段の話」ではなく「価値の話」をする必要があることを伝えるための、非常に使いやすい時事ネタだと考えています。
まとめ:入社式の社長講話で時事ネタを使う本当の意味
入社式の社長講話で時事ネタを使う目的は、出来事そのものを解説することではありません。
大切なのは、そのニュースを通じて「仕事をどう捉えるか」「社会の変化とどう向き合うか」という視点を共有することです。
万博の運営、AIを悪用した詐欺、コメ価格の上昇。
一見するとバラバラに見える話題も、「試して振り返る」「前提を疑う」「価値で考える」という仕事の本質でつながっています。
新入社員に伝えたいのは、正解を暗記することではなく、考え続ける姿勢です。
時事ネタは、その姿勢を自然に共有するための、最も身近で分かりやすい材料だと言えるでしょう。



