
社員にもっと挑戦してほしい。そう考える社長は多いと思います。では、そのために社長は何をすればよいのでしょうか。制度を変える、権限を渡す、失敗を責めない。どれも大切ですが、私はもっと日常的なところにヒントがあると考えています。それは、社長が「何を褒めているか」です。成果を出した社員だけを褒めている会社と、挑戦した行動も褒める会社では、社員が選ぶ行動は少しずつ変わっていくはずです。
- ✅成果だけを褒める会社では、社員の挑戦は増えない
- ✅社員は、社長が称賛する行動を会社の基準だと学ぶ
- ✅挑戦を増やすなら、結果だけでなく行動も称賛する
第1章 成果だけを褒めると、社員は何を学ぶのか
成果を褒めること自体は、もちろん悪いことではありません。売上を伸ばした、新しい顧客を獲得した、目標を達成した。そうした成果は会社にとって価値がありますし、努力した社員を称賛するのは自然なことです。
問題は、会社の中で「結果を出した人だけが褒められる」という状態になることです。社員は社長の言葉を、単なる感想ではなく「この会社では何が望まれているのか」という判断材料として受け取ります。成功した結果だけが繰り返し称賛されれば、社員は成功の確率が高い仕事を優先し、結果が読みにくい挑戦を避けるようになるかもしれません。
つまり、社長が何を褒めるかは、社員に会社の判断基準を伝える行為でもあるのです。
第2章 社員は「社長が何を褒めるか」を見ている
社長は、制度や方針を通じて会社の考え方を伝えているつもりになりがちです。しかし、社員が日常的に見ているのは、もっと小さな言動です。会議で誰の発言に反応するのか、どんな報告を喜ぶのか、どんな行動に「よくやった」と声をかけるのか。こうした積み重ねのほうが、社員には強く伝わることがあります。
私自身、経営者として会社を見たり、さまざまな経営者と話したりする中で、掲げている理念と実際に褒められている行動が一致していない場面を何度も見てきました。「挑戦しよう」と言いながら、結局は失敗しなかった人だけが評価される。これでは社員が慎重になるのは当然です。
社員は社長の言葉よりも、社長が実際に何を称賛しているかを見ています。
第3章 挑戦する会社は、結果だけでなく行動も称賛する
結果ではなく「挑戦した行動」にも目を向ける
社員の挑戦を増やしたいのであれば、成果だけではなく、会社として増やしたい行動そのものにも目を向ける必要があります。新しい提案をした、未経験の仕事に手を挙げた、顧客のためにこれまでと違う方法を試した。結果がまだ出ていなくても、会社が望む挑戦であれば、その行動は称賛できます。
ここで大切なのは、結果を軽視することではありません。結果は結果として見る。そのうえで、結果に至るまでの行動も見るということです。
失敗も評価する丸井グループの考え方
例えば、丸井グループは「打席数」や「試行回数」といった行動KPIを設け、成功だけでなく失敗も含めた挑戦を評価しています。私はこの考え方で重要なのは、「失敗したから評価する」ということではなく、挑戦した行動を会社として見逃さない点だと思います。
社員に増やしてほしい行動があるなら、社長自身がその行動を見つけて称賛する必要があります。
第4章 失敗をシャンパンで祝う会社が社員に伝えていること
ゲームがボツになるとシャンパンを開けるSupercell
フィンランドのゲーム会社Supercellでは、開発中のゲームが「面白くない」「基準を満たさない」と判断されてボツになったとき、チーム全員でシャンパンを開けて祝うそうです。初めてこの話を知ったとき、私はとても印象に残りました。
普通なら、企画がボツになれば反省会を開きたくなります。しかしSupercellは、そこで挑戦したこと自体を否定しません。
褒めるのは「失敗」ではなく「挑戦」である
もちろん、失敗そのものを褒めればよいという話ではありません。基準を満たさないゲームはきちんと中止する。その判断の厳しさと、挑戦したことを称賛する文化は両立します。
私はここが経営者にとって大切だと思います。失敗を見過ごすことと、失敗した社員の挑戦を認めることは別です。何が悪かったのかは振り返る。しかし、挑戦したことまで否定しない。その区別が、次の挑戦を生むのではないでしょうか。
第5章 称賛は「社員を喜ばせるため」ではなく組織をつくるためにある
ここまで読むと、「社員をもっと褒めればいいのか」と感じるかもしれません。しかし、私は単純に褒める回数を増やせばよいとは考えていません。重要なのは、会社として増やしたい行動を称賛することです。
挑戦を増やしたいなら挑戦を褒める。顧客への工夫を増やしたいなら、その工夫を褒める。部署を越えた協力を増やしたいなら、その行動を見つけて褒める。称賛は社員の機嫌を取るためのものではなく、会社として「この行動を大切にする」というメッセージを伝える手段です。
望ましい行動を日常の中で可視化し、称賛することによって、その行動が組織文化として強化されていくと紹介されています。制度をつくる前に、まず社長自身の言動が会社の求める行動と一致しているかを見直すことが必要です。
第6章 社長が褒めるものが、会社の次の行動を決める
社員にもっと挑戦してほしいと思うなら、「なぜ挑戦しないのか」と社員に原因を求める前に、社長自身が何を褒めているのかを振り返ってみる価値があります。
成果だけを見ているのか。それとも、成果につながる挑戦や望ましい行動にも目を向けているのか。社員は、社長が称賛する行動を「この会社が求めている行動」だと理解します。
会社にどんな行動を増やしたいのか。その答えがあるなら、まずその行動を見つけ、言葉にして称賛することから始める。私は、それが挑戦する組織をつくる小さくても重要な一歩だと考えています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 社員の成果を褒めることは良くないのでしょうか?
いいえ、成果を褒めること自体に問題はありません。大切なのは、成果だけを称賛の対象にしないことです。社員の挑戦を増やしたいのであれば、結果とあわせて、新しいことに取り組んだ行動や工夫にも目を向ける必要があります。
Q2. 社員の挑戦を増やすには、どんな行動を褒めればよいですか?
会社として増やしたい行動を褒めることが基本です。新しい提案をした、未経験の仕事に手を挙げた、顧客のために新しい方法を試したなど、結果が出る前の行動も称賛の対象になります。
Q3. 失敗した社員も褒めるべきなのでしょうか?
失敗そのものを褒める必要はありません。何が悪かったのかは振り返りながらも、必要な挑戦をしたことまで否定しないことが重要です。失敗と挑戦を分けて考えることで、社員が次の挑戦を避けることを防ぎやすくなります。
Q4. 称賛と人事評価は同じものですか?
称賛と人事評価は同じではありません。称賛は「会社としてその行動を望ましいと考えている」と伝える行為です。一方、人事評価は成果や役割などを基準に社員を評価する仕組みです。ただし、会社が評価することと日常的に称賛することには一貫性が必要です。
Q5. 社長が社員を褒めることは組織づくりにどんな影響がありますか?
社員は、社長が何を褒めているかを見て「この会社では何が求められているのか」を判断します。そのため、社長の日常的な称賛は単なるコミュニケーションではなく、社員の行動や組織文化をつくるメッセージになります。



