なぜ従業員はテレワークを望み経営者は出勤を望むのか?
近年、テレワークが一般的になりつつある中で、アメリカの企業においてもその適用範囲や理念に関する意見の対立が浮き彫りになっています。
特にWayfairやClearlinkといった企業の経営者たちの発言が物議を醸しており、従業員と経営陣の間での考え方の違いが露わになっています。
WayfairのCEO発言とその反響
アメリカのオンライン家具販売大手WayfairのCEO、ニラジ・シャー氏の発言が注目を浴びています。
シャー氏は、従業員に向けた内部メールで「一生懸命働かなければ成功はない」とし、長時間労働や仕事と私生活の垣根をなくすことを敬遠しないよう促しています。
これに対してネット上では様々な批判が噴出しており、「奴隷じゃない」「怠慢な企業経営の見本」といった声が広がっています。
Wayfairはコロナ禍においても業績を伸ばし、外出抑制が売上に寄与した一方で、2022年初めには業績の鈍化に伴い5%の従業員リストラを行っていました。
シャー氏の発言は、業績回復のタイミングであり、従業員に対する期待とも取れるものでした。
ClearlinkのCEO発言とテレワークへの反応
一方で、デジタルマーケティング企業であるClearlinkのCEO、ジェームズ・クラーク氏もまた物議を醸す発言をしました。
クラーク氏は対話集会で、従業員がテレワークに対応するために家族と共に飼っていた犬を売却したと述べ、「そのような犠牲を払ってくれたことに敬意を払う」と発言しました。
これに対してもネット上では「会社は従業員に誠実じゃない」「犬の方が忠実だ」といった反応が多く見られます。
従業員と経営者の価値観の対立
これらの発言や反応を見ると、従業員と経営者の間には明確な価値観の違いが存在していることが分かります。
テレワークを望む従業員は、仕事と生活の調和や柔軟性を求め、結果として家族や趣味に時間を充てることができると考えています。
一方で、一部の経営者は出社を奨励し、従業員に全力で仕事に取り組むことを期待しています。
(引用元:帝国データバンク「企業がテレワークで感じたメリット・デメリット」より)
日本の経営者も上記アメリカの経営者同様にテレワークに関してデメリットが多いと感じている方が若干多い結果となっています。
- 社内コミュニケーションが減少する、意思疎通が困難」:26.6%
- できる業務が限られる:19.3%
- 進捗や成果が把握しにくい:14.6%)
となっており、日本においても若干ではあるが、テレワークに関してデメリットが多いと感じている企業が多いことが分かります。
ただし、グラフにもあるようにテレワークをそもそも実施していない企業が全体の60%以上を占めていることを考えると、テレワークに対して懐疑的な印象を持つ企業はさらに多いと想像できます。
(引用元:公益財団法人 日本生産性本部「第 11 回 働く人の意識に関する調査」より)
また、日本の従業員も2020年以降テレワークが実施されて以降、今後もテレワークを実施したいと考える人が70%以上を占める結果となり、日本の従業員もアメリカの従業員と同様にテレワークという働き方を望む人が多いことが分かります。
従業員と経営者の価値観はどちらが正解なのか?
従業員と経営者の価値観の対立が表面化する中、テレワークや労働環境に関する議論は今後も続くと思われます。
企業は従業員のニーズに敏感に対応し、柔軟な働き方を提供することで、生産性向上や従業員の満足度向上に繋げることが求められています。
同時に、経営者も効果的な業績向上のために必要な方針を模索していく必要があります。
従業員と経営陣の価値観に妥協点を見つける1つの方法は、経営者が必要に応じた柔軟な働き方を認めることであり、従業員も与えられたミッションを達成するという価値観を持って仕事に取り組むことが重要です。
経営者は子供の世話や介護などの合理的な理由がある場合は、柔軟にテレワークを認める必要があります。
また、従業員も週5日の営業日の中で数日は出勤して、積極的に社内でのコミュニケーションを取ることで与えられた役割を達成させる必要があります。
あなたの会社では職場から笑い声が聞こえますか?
私が社会人になった頃はまだ会社の事務所の中に喫煙所が設置されていました。 最近は喫煙所自体が存在しない会社やビルもありますが、この喫煙所でのコミュニケーションは…
こちらの記事にも書きましたが、職場での雑談はコミュニケーションを深め、生産性の向上に役立つとのデータも示されています。
やはり、仕事は組織で行うものであり、集団で行動するには一定のコミュニケーションは必要です。
通勤時間がない働き方も必要ではありますが、通勤することで得られるものも多くあると私は考えます。
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