Author profile
山下午壱
1968年生まれ。兵庫県出身。 玩具業界(商社)、映画業界を経て人材サービス業界で20年働く。 代表取締役として年商10億円台の人材サービス会社を70億円台まで成長させる。 現在はエグゼクティブコーチ/経営コンサルタントとして活動中。
トヨタ「A3報告書」と「1ページ思考」に学ぶ、社長の思考

なぜトヨタはA3用紙1枚にこだわるのでしょうか。

なぜ優秀な経営者ほど、資料を「1枚」にまとめようとするのでしょうか。

私はこれまで多くの経営会議に立ち会ってきましたが、議論が長引く場面ほど、資料は厚く、論点は曖昧になっていました。

本記事では、資料作成のテクニックではなく、「社長の思考」に焦点を当てます。

トヨタのA3報告書と1ページ思考に共通する本質から、社長として何をどう考えるべきかを整理します。

記事3行まとめ

  • ✅会議が長い本当の原因は論点不在
  • ✅A3報告書と1ページ思考は決断の構造化
  • ✅社長の仕事は未来判断を1枚で引き受ける

 

第1章 なぜトヨタは「A3報告書」にこだわるのか

トヨタのA3報告書は、単に紙のサイズをA3にするという話ではありません。

1枚の中に、背景、現状、理想、課題、真因、対策、実行計画までを整理します。

つまり、問題解決の流れそのものを可視化する仕組みです。

スペースが限られているからこそ、書き手は「何が本質なのか」「何を削るのか」を考え抜かなければなりません。

私は以前、複数の資料を束ねて説明する場面に同席したことがあります。

情報は十分にありましたが、結局「で、何が問題なのか」が最後まで定まりませんでした。

一方で、A3のように1枚に整理された資料では、議論の起点とゴールが明確になります。

整理できないのは理解できていないからだ、という前提がそこにあります。

A3報告書は、資料の形式ではなく、思考の訓練なのです。

制約は不便に見えます。しかし経営においては、制約こそが思考を深くします。

1枚にまとめるという枠があるからこそ、優先順位がはっきりし、議論が前に進みます。

トヨタがA3にこだわる理由は、効率のためではなく、思考の質を高めるためにあります。

第2章 1ページ思考が経営判断を速くする理由

1ページ思考とは、資料を1枚に減らすことではありません。

目的を明確にし、背景を整理し、何を議論し、何を決めるのかを1枚に収める思考の型です。

形式よりも重要なのは、構造です。限られたスペースの中でまとめるためには、論点を絞り、優先順位を決めなければなりません。

私はこれまで、資料が多いほど判断が遅くなる場面を何度も見てきました。

情報が不足しているから決められないのではありません。何を基準に決めるのかが整理されていないからです。

ページ数が増えるほど安心感は生まれますが、判断は進みません。1枚にまとめるという行為は、自分の思考を試す作業です。

残す情報は何か。削る情報は何か。その選択は、そのまま経営判断の優先順位を映し出します。

1ページにできないということは、まだ構造化できていないということです。

1ページ思考は、相手に伝えるための技術であると同時に、社長自身の判断軸を明確にする訓練です。

判断材料が増えるから速くなるのではありません。判断基準が明確になるから、経営判断は速くなるのです。

第3章 会議が長い会社に共通する“思考の問題”

私はこれまで多くの会議を見てきましたが、会議が長引く会社には共通点があります。

それは、資料が多いことではなく、「何を決める会議なのか」が明確でないことです。

パワーポイントが何十枚と続いても、論点が定まらなければ結論は出ません。

ある企業では、1時間の会議の大半が説明に費やされていました。参加者は理解しているようで、実際には判断の基準が共有されていませんでした。

資料の問題に見えて、実は思考の問題です。社長が何を優先し、何を捨てるのかを示さなければ、議論は散らばります。

会議が長いのは、能力が低いからではありません。思考の軸が曖昧だからです。ここにこそ、経営者の思考が問われます。

第4章 A3と1ページ思考に共通する「社長の思考」

社長の思考は「説明」ではなく「決断」である

A3報告書と1ページ思考に共通しているのは、情報をうまくまとめる技術ではありません。共通しているのは、「決めるための構造」です。

多くの社長は、説明がうまくなろうとします。しかし、社長の仕事は説明することではありません。前に進める決断をすることです。

説明は過去を整理する行為ですが、決断は未来を選ぶ行為です。

削るとは、責任を引き受けることである

1枚にまとめるという行為は、単なる効率化ではありません。何を残し、何を削るのかを決めることです。

そして削るとは、選ばない選択肢を捨てることです。

私は経営の現場で、「もう少し情報を集めたい」という言葉を何度も聞いてきました。

しかし情報を増やしても、責任は軽くなりません。むしろ優先順位を明確にしたときにこそ、社長の覚悟が問われます。

社長の思考は未来から逆算する

社長の思考は、現在の延長線上ではなく、未来から逆算して組み立てるものです。

どこへ向かうのかが定まれば、必要な情報は自然と絞られます。

逆に未来が曖昧であれば、情報は増え続け、判断は遅れます。

私は「社長=未来判断」だと考えています。未来を選ぶとは、他の未来を選ばないということです。

1枚にできる社長は、才能があるのではありません。判断基準が明確なのです。

構造で考え、優先順位を決め、責任を引き受ける。その積み重ねが思考を研ぎ澄まします。

A3も1ページ思考も、形式ではなく、社長としての思考を鍛えるための訓練なのです。

第5章 なぜ社長ほど“思考を1枚にできない”のか

私はこれまで、多くの社長が「1枚にまとめる」ことに強い抵抗を感じる場面を見てきました。

能力が足りないわけではありません。むしろ責任を背負っているからこそ、削れないのです。

情報を持っていたい、間違えたくない、その気持ちはよく分かります。

しかし、すべてを残そうとすると、結局は何も決められなくなります。

思考を1枚にするとは、安心を手放し、優先順位を引き受けることでもあるのです。

第6章 社長の思考は訓練できる

A3も1ページ思考も、特別な才能を前提にしたものではありません。思考を構造で整理する訓練です。

最初から完璧に1枚にまとめる必要はありません。何を目的とし、何が論点で、何を決めるのかを書き出すだけでも、思考は整理されます。

私は、思考が明確になるほど、社長の表情が変わる瞬間を何度も見てきました。

自信は結果から生まれるのではなく、判断基準が言語化できたときに芽生えます。

1枚にまとめる習慣は、経営者としての軸を育てる行為です。社長の思考は、確実に訓練できます。


よくある質問(FAQ)

Q. A3報告書はトヨタ以外の会社でも使えますか?

使えます。A3の本質は紙のサイズではなく、背景→現状→原因→対策→実行を1枚で整理する思考の型にあります。業種や規模を問わず応用可能です。

Q. 1ページ思考は、何を書けば1枚にまとまりますか?

目的、背景、論点、結論、次の一手の順で書くとまとまりやすいです。情報を増やすより、何を決めるのかを先に固定するほうが速く整理できます。

Q. パワーポイントは本当に不要なのですか?

不要かどうかではなく、決めるための構造があるかどうかが重要です。説明のための資料が増えるほど論点がぼやける場合は、1枚で論点と結論を先に固めたほうが会議は前に進みます。

Q. 1枚にすると情報が足りずに誤判断しませんか?

誤判断の原因は情報不足より、判断基準の不明確さであることが多いです。1枚は結論の土台を揃えるためのものなので、詳細データは別紙に逃がし、判断軸だけは1枚に残す運用が安全です。

Q. まず何から始めればいいですか?

会議の議題を1つに絞り、今日決めることを1行で書くところから始めてください。そのうえで、残す情報と捨てる情報を決める習慣が、社長の思考を確実に鍛えます。

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