ペルソナ採用とは?Z世代向けペルソナの作り方

若手がすぐ辞める、人が集まらない、応募があってもマッチしない。
こうした採用の悩みを抱えている中小企業の経営者は少なくありません。
特に価値観が大きく変わってきているZ世代に対しては、従来の「条件を並べて募集をかける」スタイルでは通用しなくなっています。
そこで近年、再び注目されているのが「ペルソナ採用」という考え方です。
昔からある考え方ではありますが、Z世代や価値観の多様化が進む今、“採る前に決める”という原点に立ち返る動きが広がっています。
ペルソナ採用とは、誰でもいいから採るのではなく、
- 「どんな人と働きたいか」
- 「どんな人がこの職場で活躍できるか」
を具体的にイメージし、その人物像に合う人材にアプローチする手法です。
この記事では、ペルソナ採用の基本から、Z世代の特徴、そして具体的なペルソナの作り方までをわかりやすく解説します。
今すぐ実践できる内容ばかりですので、採用に課題を感じている中小企業の方はぜひ最後までご覧ください。
この記事のポイント
- ✅ 採用は準備が9割
理想の人物像を明確にしてから採用を始める - ✅ Z世代には共感重視
働く目的や価値観の共有が応募の決め手 - ✅妥協より長期視点
応募が少なくても無理な採用は避けるべき
ペルソナ採用とは何か?
そもそも「ペルソナ」とはどういう意味か
ペルソナとは、もともとマーケティング用語で「典型的なターゲット人物像」を指します。
採用においては「理想の応募者像」のことを指し、性別や年齢だけでなく、価値観、仕事に対する姿勢、職場への期待なども含めて具体化します。
ペルソナ採用が必要とされる背景
今、企業は
- 「採用してもすぐ辞めてしまう」
- 「応募は来るが、求めている人材とは違う」
という課題に直面しています。
その原因の多くは、「誰を採るべきか」を曖昧にしたまま採用活動を行っていることにあります。
ペルソナを明確にすることで、求人内容や面接の質問内容、評価基準を一貫させることができます。
これにより、自社に本当に合う人材だけを見極めて採用することができ、結果として離職率の低下や早期戦力化にもつながります。
中小企業にこそ必要な理由
中小企業では一人の社員が担う業務の幅が広く、文化や働き方が大企業と比べて個別性が強い傾向にあります。
だからこそ、単なるスキルや経験だけでなく、「うちの会社に合う人」かどうかを見極める必要があります。
その第一歩が、ペルソナ採用なのです。
Z世代の価値観と行動特性
Z世代とは?
Z世代とは、おおむね1997年から2012年頃に生まれた世代を指します。
社会に出て間もない若手社員として、すでに多くの企業で活躍しており、これからの採用ターゲットとして最も重要な層です。
Z世代が大切にする3つの価値観
1つ目は「意味を感じること」です。
Z世代は仕事を通じて、社会に貢献したい、自分らしさを活かしたいという思いが強い傾向があります。
単なる業務よりも、その仕事が誰の役に立つのか、どんな目的で行うのかを重視します。
2つ目は「柔軟性」です。
Z世代は育った環境からオンラインやリモートに慣れており、時間や場所の柔軟性を当たり前のように求めます。
裁量や自由がある働き方に魅力を感じ、ルールや管理の多い環境には馴染みにくい傾向があります。
3つ目は「つながり」です。
Z世代は上司や同僚との信頼関係を大切にし、孤独を避けたいという意識があります。
心理的安全性の高い職場を求める傾向が強く、「一緒に働きたい」と思える人間関係が企業選びの大きな要素になります。
Z世代の採用が難しい理由
Z世代は企業を選ぶ際に、給与や条件だけでなく、自分の価値観に合うかどうかを非常に重視します。
つまり、「誰にでも通じる求人」では響かないのです。
だからこそ、Z世代を意識したペルソナ設計が必要不可欠なのです。
Z世代に「選ばれる会社」になるためのペルソナの作り方
「採用する」だけでなく「選ばれる」視点を持つ
これからの採用では、「いい人を採りたい」だけでは不十分です。
特にZ世代は、企業から選ばれる存在であると同時に、自分に合う会社を自分の目でしっかりと見極めています。
つまり、企業が「この人に来てほしい」と思っても、相手が「ここで働きたい」と思わなければ成立しないのです。
Step1:どんな人に来てほしいかを決める
まずは、自社にとって「理想の人物像」を具体的にイメージしましょう。
年齢や経験だけでなく、
- 「どんな性格か」
- 「どんな価値観を持っているか」
- 「どんな働き方を好むか」
といった点まで想像します。
Z世代は自分の価値観を大切にしており、曖昧な求人には魅力を感じにくいため、できるだけ具体的にすることが大切です。
Step2:自社の魅力と働く環境も整理する
次に、自社がどんな職場で、どんな雰囲気なのかを言葉にしておきます。
これは「企業カルチャー」と呼ばれるもので、Z世代はこの部分をとても重視しています。
たとえば「毎朝みんなで雑談から始まる職場」「お互いをあだ名で呼ぶようなフラットな関係」など、他社とは違う自社らしさを素直に伝えることが、共感を得る第一歩です。
Step3:自社が大事にしている価値観を明文化する
どんなに待遇がよくても、自社の考え方や働き方が合わなければ、Z世代は応募してきません。
たとえば「早さよりも丁寧さを重視する」「自主性を尊重するが、助け合いも大切にしている」といったように、経営者自身が信じている価値観をはっきり言葉にすることが大切です。
Step4:面接でも“相手の目線”を意識する
Z世代の候補者は、面接の場で「この会社、自分に合うかな?」という目線で質問を投げかけてきます。
そのとき、担当者が答えられなかったり、話がぶれていたりすると、「この会社は何を大切にしてるのか分からない」と判断されてしまいます。
だからこそ、事前にペルソナと自社の考え方をセットで言語化しておくことが、信頼につながるのです。
Step5:応募したくなる「理由」を明確にする
ペルソナ採用の目的は、「この会社なら自分も働いてみたい」と思ってもらうことです。
Z世代は、自分が働く意味や目的を大切にしています。
仕事内容や条件だけでなく、「どんな未来が待っているか」「どんな人たちと働けるか」まで伝えることで、共感から応募につながりやすくなります。
よくある失敗パターンとその対策
失敗①:「誰でもいいから来てほしい」採用
採用活動でありがちな失敗が、「とにかく人がいないから誰でもいい」というスタンスです。
ですが、これでは求職者から
- 「この会社は何がしたいのかわからない」
- 「自分じゃなくてもいいのでは?」
と思われ、信頼を失う原因になります。
採用は、「自社に合った人を選ぶこと」だけでなく、「自社の想いに共感してくれる人を引き寄せること」が大切です。
まずはどんな人と働きたいかを言語化し、その人物に向けた発信を心がけましょう。
失敗②:経営者と現場のペルソナがずれている
よくあるのが、経営者と現場で「ほしい人物像」が食い違っているケースです。
たとえば、経営者は自主性を重視しているのに、現場は丁寧な指示待ちタイプを求めていると、面接で混乱が起きたり、入社後に不満が出たりします。
対策としては、採用活動を始める前に、現場リーダー・経営者・人事で「理想の人物像とは何か」をすり合わせるミーティングを行いましょう。
共通の軸を持つことで、選考の基準が安定し、ミスマッチを防ぐことができます。
失敗③:ペルソナが曖昧で実行されていない
ペルソナをつくっても、求人票や面接に落とし込まれていないと意味がありません。
「こういう人がいい」と決めたのに、結局いつも通りの求人文で募集をかけてしまっては、誰の心にも刺さりません。
採用は準備が9割です。
ペルソナは作って終わりではなく、実際の採用の流れに活かされて初めて意味があります。
求人票の表現、面接の質問内容、評価シートに至るまで、すべてをペルソナと一貫性のあるものにしましょう。
失敗④:応募が少ないから妥協して採用する
「理想の人材像はあるけれど、応募が1人しか来なかった。もう採るしかない」。
このような状況は中小企業の採用現場でよくありますが、ここで妥協して採用すると、高確率でミスマッチが起こります。
Z世代は「合わない」と感じたらすぐに辞める傾向があります。
採用後に期待外れやギャップが生まれ、定着しないまままた人を探すことになり、結果としてコストも時間も無駄になります。
大切なのは「本当に来てほしい人が現れるまで、採らない勇気」を持つことです。
求人を出す期間を延ばす、訴求内容を見直すなど、短期的な採用数より中長期の定着を優先しましょう。
ペルソナ採用で求人原稿と面接が変わる
求人票の「伝え方」で応募が変わる
ペルソナ採用の効果は、まず求人原稿に表れます。
たとえば「明るく元気な人歓迎!」ではなく、
- 「お客様との会話を楽しめる人」
- 「困っている人に自然と声をかけられる方」
と書くだけで、伝わり方がまったく変わります。
Z世代は、「自分に合っている仕事か」を文章から感じ取ろうとします。
だからこそ、求める人物像をストレートに表現し、余計な言葉を使わず、誰に向けた求人かを明確にしましょう。
面接でも「合う・合わない」が見えやすくなる
面接では、相手が自社に合うかどうかを判断する時間です。
ペルソナを設定していれば、「どうしてこの会社に興味を持ったのか」「自分らしさを発揮できそうか」といった、相性を見る質問を自然に投げかけることができます。
また、候補者にとっても「この会社の価値観、自分に合うな」と感じられれば、入社後のミスマッチも減ります。
採用時の納得感が高まれば、その後の定着率やエンゲージメントにも良い影響を与えます。
入社後の教育・定着にも効果が続く
ペルソナが明確だと、入社後の指導やフォローもやりやすくなります。
「この人にはこう伝えた方が響きやすい」「この人のやる気スイッチはここにある」といった観点をチームで共有できれば、早期離職のリスクも下がります。
ペルソナは「採用だけ」のものではなく、「育成」や「定着支援」にも活用できる武器です。
Z世代の社員に長く活躍してもらうためにも、採用の最初から明確な人物像を持っておくことが鍵になります。
まとめと実践へのステップ
採用は「誰でもいい」ではなく「誰と働きたいか」から始める
人手不足に悩む中小企業では、「とにかく人を入れたい」という気持ちが先に立ちがちです。
しかし、採用とは“人を入れる”ことではなく、“一緒に未来をつくる仲間を選ぶ”ことです。
だからこそ、自社に合う人材像=ペルソナを明確にすることが重要です。
Z世代の価値観に合わせた設計が不可欠
Z世代は、条件や待遇だけで職場を選びません。
- 「この会社は何を大切にしているのか」
- 「自分らしく働けるか」
- 「共感できる人がいるか」
など、価値観の一致を重視します。
だからこそ、企業側も自社のスタイルや価値観を言語化し、「選ばれる会社」として準備を整えておく必要があります。
実践へのステップ:小さく始めて、継続する
まずは、現場や経営層で「どんな人と働きたいか」を話し合うことから始めてみましょう。
理想の人物像が見えたら、それをもとに求人票や面接内容を見直していく。
完璧なペルソナを一度で作る必要はありません。
応募状況や定着率を見ながら、少しずつ改善していくことが成功への近道です。
「選ぶ採用」から「選ばれる採用」へ
これからの時代、企業も候補者から評価される存在です。
採用においては、いかに「選ばれるか」が問われるようになってきています。
Z世代にとって魅力的な会社とは、条件の良さ以上に、“自分の未来を託せる会社”です。
ペルソナ採用を通じて、自社の魅力を明確にし、本当に合う人材とつながっていく。
それが、定着率を高め、強い組織をつくる第一歩となります。
よくある質問(FAQ)
Q1. ペルソナ採用とは何ですか?
ペルソナ採用とは、あらかじめ「理想の人材像」を具体的に決めてから採用活動を行う手法です。誰でもいいという採用ではなく、「この人に来てほしい」と明確にすることで、ミスマッチを防ぎます。
Q2. Z世代向けにどんな求人を書けばいいですか?
Z世代は価値観や働き方への共感を大切にします。業務内容だけでなく、自社が大切にしている考え方や雰囲気、人間関係なども伝えることで応募につながりやすくなります。
Q3. ペルソナが明確になっても応募が来なかったらどうすれば?
焦って妥協するのではなく、訴求方法や媒体を見直しましょう。また、理想の人物に届く言葉になっているか、求人文の表現を再確認することも重要です。
Q4. 中小企業でもペルソナ採用は有効ですか?
中小企業こそ一人ひとりの影響力が大きいため、ペルソナ採用は非常に有効です。自社に合う人材を明確にすることで、定着率とチームの一体感が高まります。
Q5. ペルソナは一度作れば使い回せますか?
業務内容や組織の変化に合わせて定期的に見直すのが理想です。うまくいった採用の振り返りを通じて、より精度の高いペルソナに進化させましょう。
投稿者プロフィール

- エグゼクティブコーチ/経営コンサルタント
-
1968年生まれ。兵庫県出身。
玩具業界(商社)、映画業界を経て人材サービス業界で20年働く。
代表取締役として年商10億円台の人材サービス会社を70億円台まで成長させる。
経営の傍らで多くの経営者と交流し、中小企業の社長の立場でコーチング、コンサルティング実績を積む。
現在はエグゼクティブコーチ/経営コンサルタントとして活動中。
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