優秀なプレイヤーが経営で失敗する理由と成功の経営者思考法
優秀なプレイヤーが経営者として必ずしも成功するとは限りません。
現場で圧倒的な成果を上げ、誰よりも仕事ができた人が、経営の舞台に立つと戸惑い、思うような結果を出せないケースは少なくありません。
その理由はシンプルで、プレイヤーと経営者では求められる「思考法」が根本的に異なるからです。
プレイヤーとしては「自分が成果を出すこと」に集中すれば良かったものの、経営者になると「組織全体をどう機能させ、成長させるか」という視点が必要になります。
個人の成功体験がかえって足かせとなり、判断ミスや組織運営の失敗を招くこともあります。
本記事では、優秀なプレイヤーが経営で失敗する典型的な理由を掘り下げ、成功するために必要な「経営者思考法」を具体的に解説します。
- プレイヤー思考と経営者思考の違い:個人の成果重視から組織全体の成長重視へ
- 経営で成果を出す思考法:課題を抽象化し、具体的な解決策へつなげる
- 経営者思考へのシフト方法:俯瞰力と意思決定力を鍛え、経営視点を養う
優秀なプレイヤーが経営で失敗する3つの理由
優秀なプレイヤーが経営の場で失敗する理由は、単なるスキル不足ではありません。
むしろ、「これまでの成功体験が思考の壁」となることが多いのです。
ここでは、特に経営において致命的になりやすい3つの失敗要因を解説します。
理由1:プレイヤー思考のまま経営に臨んでしまう
プレイヤー時代の成功は、「自分でやる」ことに依存していることが多いです。
自分の努力とスキルで結果を出すことができたからこそ、昇進や独立を果たしたわけです。
しかし、経営者は全ての業務を自分でこなすことはできません。
重要なのは、「人を動かす仕組み」を作り、組織全体として成果を出すことです。
経営者になっても「自分が一番働けばうまくいく」と考えてしまうと、マイクロマネジメントに陥り、メンバーの主体性や成長機会を奪う結果になります。
組織は経営者1人の限界で頭打ちとなり、スケールできなくなるのです。
理由2:成功体験の過信と過去の延長で経営する
優秀なプレイヤーほど、「自分のやり方は正しい」という強い自信を持っています。
過去の成功体験があるからこそ、それに固執してしまいがちです。
しかし、経営環境は常に変化しており、過去の方法論が通用しないことも多いものです。
特に危険なのは、「この方法で自分は成功したのだから、部下も同じようにやれば良い」と考えること。
個人と組織では、成果を出すためのプロセスや課題が全く異なるため、プレイヤー時代の成功体験が逆効果になることもあります。
理由3:意思決定基準が曖昧で場当たり的な判断になる
経営者は常に意思決定を求められる立場です。
しかし、プレイヤー時代には「上から与えられた目標に対して最適な解決策を実行する」ことが主な役割でした。
一方で、経営者には「何を目指すべきか、どの課題に取り組むべきかを自分で決める」責任があります。
ここで失敗する人の多くは、感覚や経験だけに頼った意思決定をしてしまいます。
場当たり的な判断は一時的な効果を生むことがあっても、長期的な成長戦略や組織の安定性を損なうリスクが高まります。
優秀なプレイヤーが経営で失敗するのは、「能力の不足」ではなく、「思考のアップデート不足」が主な原因です。
次のセクションでは、経営で成果を出すための「成功の経営者思考法」について具体的に解説していきます。
経営で成果を出すための「成功の思考法」とは?
優秀なプレイヤーが経営で成果を出すためには、単にスキルや経験を活かすだけでは不十分です。
経営者として求められるのは、「思考の質」を変えることです。
その鍵となるのが、「抽象化と具体化の思考プロセス」です。
抽象化と具体化の思考プロセスとは?
経営課題の多くは、一見すると複雑で捉えどころがありません。
しかし、成果を出す経営者は、現場で直面する具体的な問題を「抽象化」し、その本質を見極めたうえで、再び「具体化」して実行可能な戦略へと落とし込むプロセスを繰り返しています。
- 抽象化(課題の本質を見抜く):売上低下や離職率増加といった具体的な現象から、「なぜそれが起きているのか?」を深掘りし、組織の構造的な課題や意思決定プロセスの欠陥など、根本原因を明らかにします。
- 具体化(実行可能な戦略に落とし込む):抽象化した課題をもとに、現場で実践できる具体的な施策へと変換します。これにより、課題解決のための行動が明確になり、組織全体で共有できます。
このプロセスは、経営における意思決定の精度を高めるだけでなく、組織全体の課題解決力を強化する重要なフレームワークです。
成功する経営者の3つの思考法
1. 俯瞰力(全体最適を見通す視点)
経営者は「木を見て森も見る」視点が不可欠です。
現場の課題だけに囚われず、組織全体や業界の動向を俯瞰することで、長期的な戦略を描くことができます。
2.意思決定力(曖昧な状況での判断力)
経営では不確実な状況下で決断を下す場面が多くあります。
データ分析やロジカルシンキングだけでなく、直感と経験を適切に組み合わせることが求められます。
3. 再現性のある戦略構築力(持続可能な成長の仕組み化)
単発の成功に満足せず、同じ成果を組織全体で再現できる仕組みづくりが重要です。
個人依存から脱却し、組織全体で成果を出せる体制を構築することが経営者の役割です。
経営で成果を出すためには、「抽象化と具体化の思考プロセス」を駆使して、表面的な課題の背後にある本質を見極め、それに基づいた戦略を実行することが不可欠です。
次のセクションでは、プレイヤー思考から経営者思考へとシフトするための具体的なステップをご紹介します。
プレイヤー思考から経営者思考へシフトする具体的ステップ
優秀なプレイヤーが経営者として成功するためには、単なる役割の変化だけでなく、思考の転換が必要です。
ここでは、プレイヤー思考から経営者思考へとシフトするための具体的な3つのステップをご紹介します。
Step 1:現場主義から俯瞰的視点へ切り替える
プレイヤーは、目の前のタスクや結果に集中することが求められます。
しかし経営者は、組織全体を俯瞰する視点が不可欠です。
現場の細部に入り込みすぎると、全体最適が見えなくなるため、あえて「現場から一歩引く」意識が重要です。
- 実践方法: 定期的に「全体戦略レビュー」を行い、事業の進捗や市場環境を客観的に評価する時間を確保する。
- ポイント:日常業務に埋もれず、「今、自分は全体最適を見ているか?」と自問する習慣をつける。
Step 2:意思決定のフレームワークを構築する
プレイヤーとしては、与えられた課題を解決するスキルが重視されます。
しかし経営者は、不確実な状況で意思決定を下す力が求められます。
ここで重要なのが、感覚や経験だけに頼らない、意思決定のフレームワークを持つことです。
- 実践方法:ロジカルシンキングやMECE(モレなくダブりなく)などのフレームワークを活用し、意思決定の過程を可視化する。
- ポイント: 「直感→検証→決断」のプロセスを意識することで、思考の質を高める。
Step 3:組織成果を最大化する「場づくり」に注力する
プレイヤーは自身の成果にフォーカスしますが、経営者の成果は「組織全体のパフォーマンス」で測られます。
そのため、個人ではなく、チームや組織が成果を出せる「場づくり」が重要です。
- 実践方法:権限委譲を積極的に行い、チームメンバーが自律的に行動できる環境を整備する。また、心理的安全性を確保し、意見が活発に交わされる組織文化を醸成する。
- ポイント:メンバーが成長できる環境を提供することで、結果として組織全体の生産性が向上する。
プレイヤー思考から経営者思考へとシフトするためには、
- 「視点の切り替え」
- 「意思決定の質の向上」
- 「組織づくりへの意識」
が重要です。
この3つのステップを意識することで、経営者としての成長を加速させることができます。
最後に、プレイヤー思考から脱却し、経営者として成長するためのポイントをまとめます。
まとめ:プレイヤー思考から脱却し、経営者として成長するために
優秀なプレイヤーが経営で成果を出すためには、「自分で成果を上げる」思考から「組織全体を成長させる」思考への転換が不可欠です。
プレイヤー思考に固執すると、過去の成功体験に囚われ、変化する経営環境への対応が遅れてしまいます。
経営者として成長するためには、抽象化と具体化の思考プロセスを活用し、目の前の課題だけでなく、その背後にある本質を見極める力を養うことが重要です。
そして、個人の成果ではなく、チームや組織の成果を最大化する視点を持つことで、持続可能な成長を実現できます。
経営とは、常に学び続け、思考を進化させるプロセスです。
今日から少しずつ、思考のシフトを意識してみましょう。
投稿者プロフィール

- エグゼクティブコーチ/経営コンサルタント
-
1968年生まれ。兵庫県出身。
玩具業界(商社)、映画業界を経て人材サービス業界で20年働く。
代表取締役として年商10億円台の人材サービス会社を70億円台まで成長させる。
経営の傍らで多くの経営者と交流し、中小企業の社長の立場でコーチング、コンサルティング実績を積む。
現在はエグゼクティブコーチ/経営コンサルタントとして活動中。
最新の投稿
社長・経営者の悩み2025年3月6日アメリカで増えるリベンジ退職は日本でも増えるのか? 経営者思考2025年3月4日成功する経営者が持つ思考の習慣と視点 社長・経営者の悩み2025年2月27日中小、ベンチャー企業の経営者が知るべき上司と部下の信頼関係 営業2025年2月25日社長が営業(実務)をやめるだけで会社が成長する理由