3年で退職するZ世代の新卒採用は必要か?今後の採用戦略
4月1日は、多くの企業で新入社員が入社する節目の日です。
しかし、新卒の約3割が3年以内に退職するという現実があります。
特にZ世代はデジタルネイティブとして育ち、オンラインでの情報収集やコミュニケーションには慣れていますが、対面での意思疎通や組織適応に課題を抱える傾向が強いです。
また、仕事に対する価値観も過去の世代とは異なり、成長機会ややりがいを重視します。
そのため、従来の採用や育成方法では、定着率を高めることが難しくなっています。
では、Z世代の新卒採用は本当に必要なのでしょうか。
もし必要なら、どのような戦略を取るべきでしょうか。
本記事では、新卒採用の必要性を再考し、企業が取るべき効果的な採用・育成戦略について考察します。
- Z世代の新卒採用は「育成と定着」が鍵:採用後の成長支援と環境整備が不可欠。
- 早期離職を防ぐ4つのポイント:成長機会、やりがい、柔軟な働き方、円滑なコミュニケーションを強化。
- ROIを最大化する採用戦略:企業文化とのマッチングを重視し、ミスマッチを防ぐ。
Z世代の新卒社員はなぜ3年で辞めるのか?
(引用元:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」より筆者一部加工)
厚生労働省の調査によると、新卒社員の約3割(34.9%)が3年以内に退職しています。
この傾向は年々高まっており、特にZ世代において顕著です。
入社時の期待と実際の職場環境のギャップが、早期離職の大きな要因となっています。
(引用元:働きがい研究所「3年以内に辞めたZ世代の入社&退職理由ランキング」より)
3年以内に辞めたZ世代の入社理由としては、
- 「会社のブランド・成長性」(24.2%)
- 「キャリア・個人成長」(23.1%)
- 「安定性」(16.3%)
が上位を占めています。
企業の知名度や成長性に魅力を感じて入社するものの、実際の職場環境が期待と異なると、早期に転職を考える傾向があります。
(引用元:働きがい研究所「3年以内に辞めたZ世代の入社&退職理由ランキング」より)
一方、退職理由の上位には
- 「キャリア・個人成長の不足」(31.7%)
- 「仕事へのやりがいの欠如」(20.2%)
- 「人間関係・社風への不満」(20.0%)
が挙げられています。
成長機会がないと感じることが最大の退職要因となっており、企業が新入社員のスキルアップを支援できていないことが問題となっています。
また、仕事にやりがいを感じられないことも退職の大きな要因です。
単調な業務や過度なマニュアル化により、自身の成長を実感できず、意欲を失うケースが多くなっています。
さらに、企業文化や人間関係が合わないことも、早期離職の一因となっています。
安定性を求めて入社したものの、キャリア成長を優先して転職するケースが増えており、企業側は従来の育成モデルを見直す必要があります。
Z世代の新卒採用は本当に必要なのか?
Z世代の新卒採用は、企業にとって成長の機会を提供する一方で、早期離職が課題となっています。
特に、デジタルネイティブ世代の特性が、従来の採用・育成方法と合わないケースが増えています。
ここでは、新卒採用の必要性を再考し、課題を整理します。
1. Z世代の社会人基礎力の不足
Z世代はSNSやチャットツールを活用し、非対面でのコミュニケーションに慣れていますが、対面での意思疎通や主体的な行動が苦手な傾向があります。
主な課題
- 対面での意思疎通が苦手:会議や商談での発言を躊躇する傾向
- 指示待ち傾向が強い:自主的に行動する力が不足
- 報連相やプレゼン能力の不足:職場で求められるスキルの習得が必要
2. 企業の教育コストが増加
Z世代の早期離職を防ぐため、多くの企業が「社会人基礎力研修」を強化しています。
主な対策
- ビジネスマナー研修の充実:基本的な職場マナーを入社時に徹底
- 対話型研修の導入:プレゼンやディスカッションを増やし、発信力を強化
3. 新卒採用のROI(投資対効果)の低下
企業は1人あたり50万~100万円の採用・育成コストをかけていますが、3年以内に辞めるとその回収が困難になります。
そのため、即戦力となる中途採用を優先する企業も増えています。
主な影響
- 教育投資の回収が難しい:早期離職が続くと、採用コストの負担が増大
- 即戦力採用へのシフト:未経験者の育成よりも、経験者を優先する流れ
しかし、新卒採用を完全にやめるのではなく、Z世代の特性を理解し、定着率を上げる育成戦略を実施することが重要です。
次章では、具体的な採用・育成戦略について解説します。
Z世代の新卒社員を定着させるための採用・育成戦略
Z世代の定着には、成長機会とやりがいの提供が不可欠です。
適切な施策を実施することで、早期離職を防ぐことができます。
1. 「成長機会」を重視したキャリア設計
スキルアップの機会を提供することが重要です。
主な施策
- メンター制度:先輩社員が業務やキャリアを支援
- 1on1ミーティング:定期的な面談で方向性を明確にする
- ジョブローテーション:多様な経験を提供し、成長を促す
2. やりがいを感じる仕事の設計
仕事の意義を明確にし、主体性を引き出します。
主な施策
- 「任せる文化」:早期に裁量を与え、責任ある仕事を任せる
- プロジェクト型業務:挑戦の機会を提供し、成長を実感させる
3. コミュニケーションの仕組み化
Z世代に適したツールを活用し、円滑な情報共有を促します。
主な施策
- SlackやNotionの活用:情報共有をスムーズに
- リアルタイムフィードバック:迅速なアドバイスで成長を促す
4. ワーク・ライフ・バランスの見直し
柔軟な働き方を提供し、働きやすい環境を整えます。
主な施策
- リモートワーク・フレックスタイム制の導入
- 残業削減と生産性向上
5. 採用時に企業文化とのマッチングを徹底
企業文化に合う人材の採用が、長期定着の鍵となります。
主な施策
- 「カルチャーフィット」を重視:企業理念に共感できる人材を採用
- 価値観を透明化:ミスマッチを防ぐ
Z世代の定着には、成長機会・やりがいの提供、円滑なコミュニケーション、柔軟な働き方、適切な採用基準 の4つが鍵となります。
これらを実施すれば、離職率を抑え、長期的に活躍できる人材を育成できます。
まとめ:Z世代の新卒採用は、必要だが「方法」が重要
Z世代の新卒採用は、単なる「採用」ではなく、「育成・定着」の視点が不可欠です。
企業が適切な戦略を実施すれば、新卒採用は依然として価値があります。
早期離職を防ぐには、「成長機会」「やりがい」「柔軟な働き方」「コミュニケーション」の見直しが重要です。
スキルアップの機会を提供し、裁量を与え、働きやすい環境を整えることで、Z世代の定着率は向上します。
また、採用段階での「企業文化とのマッチング」が定着率向上のカギを握ります。
自社の理念や価値観を明確にし、それに共感できる人材を選ぶことが不可欠です。
今後の採用活動では、Z世代の特性を理解し、適切なアプローチを取ることが求められます。
これにより、長期的に活躍できる人材を育成し、企業の成長につなげることができるでしょう。
投稿者プロフィール

- エグゼクティブコーチ/経営コンサルタント
-
1968年生まれ。兵庫県出身。
玩具業界(商社)、映画業界を経て人材サービス業界で20年働く。
代表取締役として年商10億円台の人材サービス会社を70億円台まで成長させる。
経営の傍らで多くの経営者と交流し、中小企業の社長の立場でコーチング、コンサルティング実績を積む。
現在はエグゼクティブコーチ/経営コンサルタントとして活動中。
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