アメリカで増えるリベンジ退職は日本でも増えるのか?
「リベンジ退職」という言葉をご存じでしょうか?
これは、職場への強い不満や報復心を持って退職する行動を指します。
近年、特にアメリカで急増しており、Google検索でも「リベンジ退職(Revenge Quitting)」に関するキーワードの検索数が急上昇しています。
この現象の背景には、労働市場の活性化や職場環境の問題が影響しています。
日本でも、少子化や働き方改革の進展により、退職に対する考え方が大きく変わりつつあります。
終身雇用や年功序列といった伝統的な雇用慣行が見直される中、「リベンジ退職」は日本でも広がる可能性があるのでしょうか?
本記事では、アメリカのリベンジ退職の現状を紹介しつつ、日本の退職事情や企業が取るべき対応策を解説します。
- リベンジ退職とは?アメリカで急増する理由:職場への不満や報復心から辞める「リベンジ退職」が、アメリカでトレンド化している背景を解説。
- 日本でもリベンジ退職が広がる可能性は?:日本の退職事情や若年層の価値観変化を踏まえ、リベンジ退職が国内でも増加する可能性を考察。
- 日本企業が取るべき対応策とは?:人材流出を防ぐための職場環境改善、透明な評価制度、退職者との関係維持のポイントを紹介。
リベンジ退職とは?アメリカでの現状
リベンジ退職とは、職場での不満やストレスが蓄積し、報復的な意図を持って退職する行為を指します。
これは、単なる転職やキャリアアップを目的とした円満退職とは異なり、感情的な要素が強く、時には会社にダメージを与えることを目的とする場合もあります。
アメリカでは、2025年に入りリベンジ退職が大きなトレンドとなっています。
Googleで「リベンジ退職」というキーワードの検索数が急増しており、特に若年層を中心にこの動きが広がっているようです。
背景には、コロナ禍からの経済回復による転職市場の好調さや、労働環境への不満があると考えられます。
また、アメリカの労働市場は雇用者数がコロナ禍前を超えるなど、転職のチャンスが増加しています。
これにより、職場に不満を持つ従業員が「次がある」と考え、リベンジ退職を選択しやすい状況が生まれているのです。
なぜアメリカでリベンジ退職が増えているのか
リベンジ退職がアメリカで急増している背景には、複数の要因が関係しています。
経済的な環境の変化や職場環境の問題、そして若年層の価値観の変化が影響しています。
1. 労働市場の好調が後押し
2025年現在、アメリカの労働市場は活況を呈しています。
アメリカ労働省のデータによると、2025年1月の雇用者数は前月比14万3000人増加し、コロナ禍前を超える水準に達しました。
求人が豊富な状況では、従業員は今の職場に固執せず、より良い条件を求めて動きやすくなります。
「次がある」と考えることで、職場に対する不満をリベンジ退職という形で示しやすいのです。
2. 職場環境の問題が引き金に
長時間労働や不当な評価、ハラスメントなどが、リベンジ退職の大きな要因です。
特に、アメリカでは「静かな退職(Quiet Quitting)」のように、最低限の仕事しかしない消極的な対応が注目される一方、リベンジ退職は「職場に対する強いメッセージを込めた積極的な離職」として対照的な行動です。
職場環境の悪化は、社員のモチベーションを大きく下げ、感情的な退職を促進します。
3. 若年層の価値観とSNSの影響
ミレニアル世代やZ世代を中心に、職場環境やキャリアに対する価値観が変化しています。
「会社に尽くす」よりも「自分を大切にする」考え方が主流となり、合わない職場を見限ることに抵抗が少なくなっています。
また、SNSやYouTube、TikTokなどでリベンジ退職の体験談が共有されることで、「自分を守るための選択肢」として一般化しつつあります。
このように、経済的な好条件や職場環境の悪化、そして若年層の意識変化が相まって、アメリカではリベンジ退職が広がっています。
この動きは、企業にとって大きな課題となっており、従業員満足度を高める取り組みが一層求められています。
日本における退職事情とリベンジ退職の可能性
リベンジ退職がアメリカで話題になる中、日本でも同様の動きが広がる可能性があります。
日本の退職事情を見てみると、職場に対する不満が背景にあるケースは少なくありません。
日本の退職理由:不満が大きな要因
(引用元:厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況」より筆者抜粋作成)
厚生労働省の「転職者実態調査」(2020年)によると、日本で自己都合退職を選んだ理由は次の通りです。
- 労働条件への不満(28.2%)
- 仕事内容への不満(26.0%)
- 賃金の低さ(23.8%)
これらの理由は、アメリカでリベンジ退職が増加している背景と共通しています。
しかし、日本ではまだ「感情的な報復」を伴うケースは少なく、静かに辞める「円満退職」が主流です。
ただし、潜在的な不満が蓄積すれば、今後リベンジ退職が増加する可能性は十分にあります。
退職代行サービスの増加が示す変化
近年、日本でも退職代行サービスの利用が増加しています。
企業の約1割が退職代行を利用した社員の退職を経験したことがあるとされています。
この現象は、上司や同僚に直接退職を伝えることができないほど精神的に追い詰められたケースだけでなく、職場に対する不満が積もり積もった結果として「静かなリベンジ」を選択するケースもあります。
退職代行を使うことで、職場と完全に縁を切るという新たな形のリベンジ退職が生まれつつあります。
リベンジ退職が日本で増える可能性は?
(引用元:東京商工会議所「2024年度 新入社員意識調査」より)
日本でも、若年層を中心に転職への抵抗感が薄れつつあります。
東京商工会議所の調査(2024年)では、「定年まで同じ会社で働きたい」と答えた新入社員は21.1%に減少し、「チャンスがあれば転職したい」という意見は26.4%に増加しました。
少子化や人材不足が進む中、企業側が従業員の不満に気づかず対応を怠れば、今後は日本でも「リベンジ退職」が増える可能性があります。
企業は、従業員満足度を高める取り組みが求められています。
日本で進む退職スタイルの変化とその背景
日本の職場環境では、近年退職スタイルの変化が顕著になっています。
これまでは「円満退職」が主流でしたが、現代では「自己実現型退職」や「関係断絶型退職」といった新たなスタイルが台頭しています。
この変化の背景には、社会的価値観の変化や雇用環境の変化が大きく影響しています。
従来の「円満退職」から「自己実現型退職」へ
日本では長らく、上司や同僚に挨拶をして引き継ぎを丁寧に行う「円満退職」が美徳とされてきました。
しかし、最近では自己実現を優先する退職スタイルが増えています。
「自己実現型退職」とは、現職に特別な不満があるわけではないものの、「より自分に合った仕事をしたい」「スキルアップを目指したい」という前向きな理由で退職するケースを指します。
この背景には、キャリアアップを重視する若年層の価値観や、転職市場の活性化があります。
例えば、IT業界やスタートアップ企業では、経験を積んでから新しい環境へ移ることがキャリアの一部として自然に受け入れられています。
このような退職は、企業と従業員の双方にとってポジティブな転機となることが多いです。
「関係断絶型退職」の増加:退職代行サービスの活用
一方で、会社との関係を完全に断ち切る「関係断絶型退職」も増加しています。
これは、近年注目を集めている退職代行サービスの普及と関連しています。
退職代行サービスを利用することで、退職者は会社と直接やり取りせずに離職できます。
これは、「職場での人間関係に悩んでいた」「上司に退職を言い出せない」といった心理的負担を軽減する手段として利用されていますが、実際には「職場に対する強い拒絶感」や「関係を断ち切りたい」というネガティブな動機も含まれています。
例えば、ハラスメント問題や不当な労働環境に対する対抗手段として利用されることもあり、企業側にとっては突然の人材流出となるリスクがあります。
退職スタイルの変化を促す背景
これらの退職スタイルの変化には、以下のような要因があります:
- 価値観の多様化: 若年層を中心に「会社に尽くす」から「自分を大切にする」意識への変化。
- 労働市場の流動性: コロナ禍後の景気回復に伴い、転職がしやすくなったこと。
- テクノロジーの普及: 退職代行サービスや転職サイトの利用が一般化し、退職へのハードルが下がった。
企業側は、従業員のニーズに応え、職場環境を改善することで、人材の流出を防ぐ対策が求められています。
また、円満退職を推奨する文化を育てることも重要です。
まとめ:今後の日本企業への影響と対応策
リベンジ退職や新たな退職スタイルの広がりは、日本企業にとって人材流出や企業イメージの悪化といったリスクをもたらします。
特に、突然の退職は業務効率の低下や採用・教育コストの増加を招き、企業経営に大きな影響を与えかねません。
企業が取るべき対応策として、まずは職場環境の改善が重要です。
長時間労働やハラスメントを防止し、社員の不満を早期にキャッチする仕組みを整えることが求められます。
また、透明性のある評価制度を導入し、社員が正当に評価されていると感じられる環境づくりが必要です。
さらに、退職者との良好な関係維持も有効です。
アルムナイ制度※1を活用して、退職後もコミュニケーションを続けることで、再入社やビジネスパートナーとしての可能性を広げることができます。
企業は、柔軟な人事戦略と社員満足度の向上を図り、持続的な成長を目指すことが大切です。
※1アルムナイ制度
企業が退職した元社員(アルムナイ)と関係を維持する取り組みです。コミュニティやネットワークを通じて、情報共有や交流を続け、再雇用やビジネスパートナーとしての関係構築を目指します。
投稿者プロフィール

- エグゼクティブコーチ/経営コンサルタント
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1968年生まれ。兵庫県出身。
玩具業界(商社)、映画業界を経て人材サービス業界で20年働く。
代表取締役として年商10億円台の人材サービス会社を70億円台まで成長させる。
経営の傍らで多くの経営者と交流し、中小企業の社長の立場でコーチング、コンサルティング実績を積む。
現在はエグゼクティブコーチ/経営コンサルタントとして活動中。
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