中小企業の社長が経営力を高めるには「時間の使い方」を変えるべき理由

中小企業の社長が経営力を高めるには「時間の使い方」を変えるべき理由

「とにかく忙しい」。

多くの中小企業の社長が口をそろえて言う言葉です。

しかし、経営者が本当にすべきことは、雑務に追われることではなく、企業の未来に向けた意思決定と組織づくりです。

そのために欠かせないのが「時間の使い方」を見直すこと。

この記事では、最新の調査データや事例をもとに、「経営力」を高めるために社長が取り組むべき時間活用術をわかりやすく解説します。

この記事のポイント

  • ✅優先順位が経営力を左右
    限られた時間を「何に使わないか」を明確にすることで判断力が高まります。
  • ✅考える時間を死守せよ
    週1でも構わない。未来を構想する時間をスケジュールに組み込むことが鍵です。
  • ✅社長の行動が文化をつくる
    時間をどう使うかは社員に伝染します。自らの意思で動く姿勢が信頼を生みます。

 

なぜ今「時間の使い方」が経営力に直結するのか

中小企業の経営者にとって「時間」は、最も重要で、そして最も失われやすい資源です。

日々の業務や社員対応、トラブル処理に追われているうちに、重要な判断や成長戦略に充てる時間が削られてしまっていることが少なくありません。

2024年のGallup社の「State of the Global Workplace」レポートによると、世界の従業員エンゲージメントは21%まで低下し、特にマネージャー層の低下幅が大きいと報告されています。

エンゲージメントの低下は、マネージャー層を含む多くの働き手が、集中すべき仕事に十分な時間を取れていない現実を示しています。

実際、Slackの調査では、67%の社員が「集中できるブロックタイムがあれば生産性が上がる」と回答しています。

これは経営者にも同じことが言えます。

自分の時間を守り、集中すべき経営判断にエネルギーを使うことが、結果的に組織全体の生産性を底上げする鍵なのです。

経営者自身が「目の前のことを処理する」状態から脱し、「会社の未来を考える時間をつくる」状態に移行できるかどうかが、経営力の差となって表れます。

つまり、「どう時間を使うか」は、そのまま「どう経営するか」につながっているのです。

「すべてに対応する社長」が会社を止める理由

社員の相談には即レス、取引先の要望にはすぐ対応。

こうした“何でも対応する社長”は、一見すると頼れるリーダーに見えるかもしれません。

しかし、それが常態化すると、かえって組織全体の成長を妨げてしまう危険性があります。

たとえば、社長がすべての業務に関わっていると、社員が自ら判断し、行動する機会が奪われてしまいます。

結果として、「社長がいないと何も進まない会社」になってしまうのです。

また、社長自身も経営の重要課題に集中できず、経営判断のスピードや質が落ちていきます。

本当に経営力のある社長は、「すべてに応えること」が価値ではないと知っています。

何に応えるべきか、どこに集中すべきかを選び抜く力こそが、企業を次の成長ステージに導く鍵なのです。

成果を出す社長は「やらないこと」を明確にしている

「断る力」は経営スキル

中小企業の経営者にとって、あらゆる業務や要望に応えることは日常です。

しかし、すべてに対応していては、最も重要な判断や戦略に集中する時間が失われてしまいます。

経営者が自らの時間の使い方をコントロールするには、「何をやらないか」を明確にすることが欠かせません。

優れた経営者は、やるべきことだけでなく「やらないことリスト」を持っています。

たとえば、「毎朝のルーティン業務は社員に委ねる」「週1回以上の外部会議は極力入れない」など、あらかじめ“断る基準”を明文化することで、迷わず優先順位を守ることができます。

数字で管理する優先順位

効果的な時間管理には、定量的な視点も重要です。

たとえば、「今期の売上に直結する業務」「3年後のビジョンに貢献する戦略」のように、目的別に活動の優先度を点数化しておくと、対応すべきかどうかの判断が早くなります。

「考える時間」を守るという選択

もうひとつ大切なのが、「思考の時間」を自ら確保することです。

週に1〜2時間でも「経営課題に集中するための時間」をカレンダーにブロックしておくだけで、質の高い判断と構想が可能になります。

この時間は会議や雑務以上に大切な“経営の土台”です。

時間のルール化を定着させる3つの原則

時間の使い方に関するルールを実際に機能させるには、以下の3つの原則を意識することが大切です。

  • 明文化:曖昧なルールではなく、数字や曜日などで明確に決める
  • 社内共有:社員や関係者にルールを共有し、理解を得る
  • 継続習慣:1ヶ月以上続けて“当たり前の仕組み”にする

「時間のルール化」は、限られた時間資源を最大限に活かすための手段です。

意図的に取り入れることで、経営力の土台が確かなものになっていきます。

“やらないこと”を決めた経営者に訪れる3つの変化

成果1:集中力が戻り、意思決定が速くなる

時間の使い方を見直し、自分にとって重要な仕事に集中できるようになると、経営者としての最大の武器である「判断力」が戻ってきます。

特に、余白のある時間が確保できると、情報の整理や優先順位づけがしやすくなり、迷いなく意思決定ができるようになります。

成果2:社員との信頼関係が深まる

社長が「何に集中しているか」を明示することで、社員もその姿勢を理解し、無駄な報告や相談を減らすようになります。

また、自分の時間のルールを守る社長は、社員の時間も尊重する傾向が強くなり、双方の信頼関係が深まっていきます。

成果3:仕事に追われず「会社の未来」に向き合える

時間の使い方に明確なルールを持つことで、日々の対応に追われる状態から脱却し、中長期のビジョンに向き合う時間が確保されます。

新規事業、採用戦略、後継者育成など、普段は後回しになりがちな「未来を創る仕事」にしっかりと時間を投資できるようになります。

社長の「時間の使い方の姿勢」が会社文化を変える

社長がどのように時間を使っているかは、社員にとって無意識の指標になります。

もし社長が、すべての連絡に即レスし、夜中まで働き続けていれば、それが「この会社の基準」になってしまうのです。

逆に、社長自身が優先順位を明確にし、集中すべきことにエネルギーを注いでいれば、社員もその姿勢を見習い、「対応より選択」を重視する文化が生まれます。

これは、持続可能な組織をつくるうえで非常に重要な価値観です。

時間に追われるのではなく、時間を自らの意思で使う。

その姿勢こそが、現代の経営者にとって最も必要な“リーダーシップのかたち”と言えるでしょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. なぜ「時間の使い方」が経営力に影響するのですか?

社長の時間は経営判断や戦略構築に直結します。雑務に追われることで本来の判断力が損なわれ、会社の方向性に影響を与えるためです。

Q2. 時間の使い方にルールを設けると、社員から反発されませんか?

明確なルールは“冷たさ”ではなく、“一貫性”として伝わります。優先順位を明確にしている社長ほど、社員も目的に沿った動きをしやすくなり、結果的に信頼関係が深まるケースが多くあります。

Q3. どのように「考える時間」を確保すれば良いですか?

週に1回、時間帯と曜日を固定して予定に組み込みます。会議や連絡の制限を設けて“ブロックタイム”を守るのが効果的です。

Q4. 具体的にどのようなルールを設ければ良いですか?

たとえば「会議は週2回30分以内」「メールは1日3回確認」「毎週水曜午前は構想時間」など、明文化して実行することが重要です。

Q5. 時間の使い方を変えることで本当に会社は変わりますか?

経営者の行動は社員に大きな影響を与えます。社長が意図的に時間を使うようになると、組織全体が「選択と集中」型に変わっていきます。

投稿者プロフィール

山下午壱
山下午壱エグゼクティブコーチ/経営コンサルタント
1968年生まれ。兵庫県出身。
玩具業界(商社)、映画業界を経て人材サービス業界で20年働く。
代表取締役として年商10億円台の人材サービス会社を70億円台まで成長させる。
経営の傍らで多くの経営者と交流し、中小企業の社長の立場でコーチング、コンサルティング実績を積む。
現在はエグゼクティブコーチ/経営コンサルタントとして活動中。