Author profile
山下午壱
1968年生まれ。兵庫県出身。 玩具業界(商社)、映画業界を経て人材サービス業界で20年働く。 代表取締役として年商10億円台の人材サービス会社を70億円台まで成長させる。 現在はエグゼクティブコーチ/経営コンサルタントとして活動中。
社長にはなぜ「視座の高さ」が必要なのか?

社長として日々の業務に追われていると、どうしても目の前の売上やトラブル対応ばかりに意識が向かってしまいます。

私も現場に入り過ぎていた時期には、気づけば会社全体の方向性を考える時間がほとんどありませんでした。

この記事では、社長にとってなぜ「視座の高さ」が重要なのかを、大局観・将来性・ビジョンという切り口と、自分の体験や考察、そしてそこから得た感想を交えながら具体的にお伝えします。

少し立ち止まって一緒に考えてみませんか。

この記事のポイント

  • ✅ 視座の高さが成長を決める
    社長の視座が高いほど意思決定の質が安定し、会社の成長速度が上がる。
  • ✅語り方がリーダー像を作る
    抽象度の高い語り方は「大局を見ているリーダー」として信頼を高める。
  • ✅任せる組織へ変わる
    視座が上がると権限委譲が進み、社員が目的基準で動く強い組織になる。

 

第1章:社長に視座の高さが必要な理由とは

視座が高い社長は何を見ているのか

私が事業を経営してきて痛感したのは、社長の視座が低いと会社の可能性まで一気に縮んでしまうという現実です。

視座が低い状態では、どうしても今日の売上、今月の資金繰り、クレーム対応といった「足元の出来事」に意識の大半が奪われます。

その結果、1年後、3年後、5年後に会社をどうしたいのかという将来像を描く余力がなくなってしまいます。

視座の高い社長が考えていること

一方で、視座の高い社長は同じ売上表やトラブルを見ていても、解釈の仕方がまったく違います。

今起きている出来事を「短期の問題」としてではなく、「会社の構造やビジネスモデルを見直すサイン」として捉えます。

例えば売上が横ばいであれば、「営業担当の数字が悪い」と責めるのではなく、「そもそもの提供価値やターゲット設定が時代とズレていないか」と一段上のレイヤーから考えます。

視座の高さは、単なる抽象的な精神論ではありません。

どの時間軸で物事を見るか、どの範囲を自分の責任領域とみなすかという、極めて実務的な経営スキルです。

社長が日々の判断を「今だけ」ではなく、「中長期」「社会全体」「お客様や社員の人生」まで視野に入れて行うほど、会社はぶれにくくなり、意思決定の質も安定していきます。

第2章:視座の低い社長に共通する3つの特徴

①実務に入りすぎて全体を見失う

中小・ベンチャー企業の経営者の多くは、現場作業からシフト管理、クレーム対応まで全てを自分で行っています。

「自分が動いたほうが早い」という思い込みが強いからでしょうか?

これは視座が低い状態の典型例です。

実務に深く入りすぎると、どうしても時間の大半が目の前の問題処理で消えてしまい、会社の全体像や将来の方向性を考える余裕がなくなります。

結果として、社長が現場の延長線上で判断を下すようになってしまい、経営の精度が落ちていきます。

②細かい指示が増え、社員が育たない

視座が低い社長は「やり方を詳しく説明しなければ不安だ」と感じ、指示が細かくなりがちです。

例えば、「この順番で作業してほしい」「こういう言い回しでお客様に伝えてほしい」など、ほぼマニュアルのような指示を出すケースです。

一見すると丁寧な指導のようにも見えますが、実際には社員の判断力を奪い、自立を妨げる結果につながります。

私もかつて同じような失敗を経験し、「細部を指示すればするほど、逆に社員は動けなくなる」という事実に気づかされました。

③短期思考になり、中長期戦略が止まる

視座が低い状態が続くと、社長の判断軸が「今」「今日」「今月の数字」に偏っていきます。

本来、社長が考えるべきは1年後、3年後、5年後の会社の姿であるはずなのに、短期視点に固定されたままだと、重要な投資や撤退の判断が後ろ倒しになり、会社の成長スピードが鈍ります。

特に中小企業やベンチャー企業は、社長の意思決定スピードが会社全体に直結するため、短期思考が続くほど競争力は落ちていきます。

私はこのことに気づいてから、「社長が見るべき時間軸」を意識的に引き上げるようになりました。

第3章:視座を上げる鍵は“語り方(抽象性)”にある

抽象度の高い言葉がリーダーの影響力を高める

視座を上げるための実務的な方法として、私が特に効果を実感したのが「語り方の抽象度を上げる」というアプローチです。

参照した研究によると、権力感の強い人物は物事を抽象的に捉える傾向があり、抽象的に語ることで周囲に「大局を見ている人物」という印象を与えやすいとされています。

私自身も、具体的な手順や細かい数字ばかりを説明するのではなく、「なぜそれをするのか」「どんな価値を生みたいのか」という上位概念から語るように変えたところ、社員からの理解や共感が大きく高まりました。

研究が示す“抽象的な言葉の力”

ハーバード大学の研究では、スタートアップのピッチにおいて「抽象的な表現を使うほうが投資家の評価が高い」という結果が示されています。

理由はシンプルで、抽象的な言葉には将来性や成長の余白を感じさせる力があるためです。

逆に、あまりに細部に踏み込みすぎる説明は、話し手の視座を低く見せてしまい、経営者としての魅力や説得力を弱めます。

私はこの研究を知ったとき、自分の過去のプレゼンが「説明しすぎ」に偏っていたことに気づき、強い反省を覚えました。

語り方を変えることが視座を引き上げる習慣になる

語り方の抽象度をほんの少し上げるだけで、社長自身の思考レベルも自然と高い位置に引き上げられます。

例えば、「売上を上げたい」ではなく「この地域にどのような価値を届けたいのか」と語るようにすると、頭の中が自然と上位概念へ向かいます。

私の場合、語り方を意識して変えたことで、短期の数字ではなく「どんな未来をつくる会社でありたいか」を考える時間が増えました。

その結果、社員との会話も深まり、組織に一体感が生まれる実感があります。

第4章:視座を上げると組織に何が起こるのか

社員が“目的”で動き始める

視座を意識的に引き上げ始めて感じたのは、組織の動きが明らかに変わったということです。

以前は、細かい指示に頼っている社員が多く、私自身も「いちいち説明しないと動いてくれない」と不満を持っていました。

しかし、私が語る内容を「やり方」ではなく「目的」「意図」「価値」に変えたことで、社員が自分なりに判断して動く場面が増えていきました。

これは、視座が上がったことで私の伝え方が変わり、結果として社員が“目的基準”で行動するようになったからです。

権限委譲が進み、経営判断がスムーズになる

視座の高い状態を維持できると、自然と「任せること」が増えていきます。

例えば、細かい進行管理や日常のトラブル対応は、私よりも現場のリーダーの方が早く正確に判断できます。

視座が低かった頃は、その事実に気づいていても不安で任せ切れませんでした。

ですが今は、「全体の方向性」「最終的な目的」を私が示し、手段の決定は現場に委ねる形に切り替えています。

その結果、組織の意思決定スピードが大幅に向上し、社長として本来向き合うべき中長期の判断に集中できるようになりました。

組織の成長スピードが上がる

私の実感として、視座を高めたことで最も大きな変化は「組織全体の成長スピード」が明らかに上がったことです。

これは、私が動き回る組織から、「社員が動き、私は方向を示す組織」へと形が変わったからです。

視座が高い社長の下では、社員が自立し、挑戦し、学び続ける文化が生まれます。

こうした積み重ねが、会社の成長曲線を着実に押し上げていくのです。

第5章:経営者は“経営者にしかできないこと”に集中すべき

社長が担うべき役割とは何か

私が事業を経験して確信しているのは、「経営者が実務に入りすぎると会社は伸びない」という事実です。

経営者が本当に集中すべきことは、現場の作業や細かい管理ではありません。

社長は、会社の方向性を決めること、目指す未来を描くこと、社会にどんな価値を届けるのかを明確に言語化することが役割です。

こうした“経営者にしかできない領域”は、誰かに任せることができませんし、ここが弱くなると会社全体が迷走します。

視座の高さが社長の仕事の質を変える

視座を高めることは、こうした経営者の役割を果たすための前提条件です。

視座が低いと、どうしても短期的な判断や場当たりの対応が増え、長期的な戦略を考える時間が奪われます。

私も視座が低かった頃は、常に何かに追われている感覚がありました。

しかし視座を上げた今は、未来を考える余裕が生まれ、会社の方向性をじっくり磨く時間が取れるようになりました。

結果として、経営者としての判断の質が格段に向上したと感じています。

社長が変われば会社が変わる

自分の視座を上げることは、会社全体のレベルを引き上げることでもあります。

社長の考える“高さ”が組織の限界値を決めると言っても過言ではありません。

視座の高さが整うことで、社長自身の行動や言葉の影響力が増し、組織全体が同じ方向に向かって進みやすくなります。

まとめ:視座を上げることが社長の成長に直結する

視座の高さは、社長としての成長や組織づくりに直結する重要な要素です。

視座を上げることで、社員は自立し、組織は前向きに動き、会社の成長スピードは確実に上がります。

そして何より、社長自身が本来取り組むべき「未来を描く仕事」に集中できるようになります。

視座を上げる努力は、経営者としての質を高め、会社の未来を大きく変える力を持っています。


よくある質問(FAQ)

Q1. 視座を上げるために、まず何から始めれば良いですか?

日々の会話や会議で「目的」から話し始める習慣が最も簡単で効果的です。やり方より「なぜ?」の視点を優先してください。

Q2. 視座を上げるとマイクロマネジメントは減りますか?

はい。視座が高くなると社長の判断軸が上位概念に移るため、自然と手段の決定を社員に任せられるようになります。

Q3. 抽象的に語ると社員が混乱しませんか?

目的を抽象的に語り、具体的な方法は社員に委ねるのがポイントです。目的が明確であれば混乱は避けられます。

Q4. 視座を上げる努力は毎日続ける必要がありますか?

はい。視座は一度上げても元に戻りやすいため、語り方・時間軸・視野を意識した継続が重要です。

Q5. 社長が視座を高めると会社の成長に直結しますか?

直結します。社長の視座が高いほど意思決定の質が上がり、社員の自立が進み、組織の成長速度が高まります。

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