
「部下の意見を聞く社長は優秀」「意見を聞かない社長は危険」。
こうした言い方を、私も過去に何度も耳にしてきました。
けれど中小・ベンチャー企業の現場で起きているのは、もう少し複雑です。
実際には、部下の意見を丁寧に集めるほど決断が遅れ、最後に迷いが残る社長も少なくありません。
重要なのは“聞く量”ではなく“聞き方”だということです。
本記事では、部下の意見をどう扱えば社長の決断力が上がるのか、その入り口として「嫌われる不安」を整理していきます。
この記事のポイント
- ✅部下の意見を聞かない社長は必ず嫌われるわけではない
✅意見を聞きすぎるほど社長の決断力は低下する
✅決断力が高い社長は意見の聞き方を設計している
部下の意見を聞かない社長は本当に嫌われるのか?
部下の意見を聞かない社長は、しばしば「独裁的なのではないか」と見られがちです。
実際、私自身も経営の判断を急いだ直後に、「今の言い方は冷たく受け取られたかもしれない」と気にすることがあります。
社長は最終決定者であるがゆえに、どうしても結論だけが目立ちやすく、その過程が見えないと「意見を聞いていない人」に映ってしまうのです。
ただ、結論から言えば「意見を聞かない=嫌われる」とは限りません。
部下が不満を持つのは、多くの場合、意見が採用されないこと自体よりも「なぜその判断になったのか」が分からない状態です。
さらに言えば、普段は耳を傾けているのに、肝心な場面で説明がないと反発が強まります。
つまり問題は、聞くか聞かないかではなく、意見を受け取った後に社長がどう扱い、どう伝えるかにあります。
ここを誤ると、社長は嫌われたくない一心で意見を集め始め、結果として決断力を下げてしまいます。
逆に言えば、聞き方を設計できれば、必要以上に“嫌われる不安”に振り回されずに済みます。
なぜ社長は部下の意見を聞きたくなってしまうのか
「合理的に判断したい」という思いの裏側
社長が部下の意見を聞きたくなる理由は、単に民主的でありたいからではありません。
多くの場合、「独りよがりな判断をしたくない」「現場とズレた決断を避けたい」という、極めて合理的な動機から始まります。
私自身も、事業が拡大し始めた頃ほど、自分の感覚だけで決めることに不安を覚え、意見を集める機会を増やしていました。
嫌われたくないという心理が判断を曇らせる
ただ、その合理性の奥には別の心理が潜んでいます。
それが「部下から嫌われたくない」という感情です。
中小・ベンチャー企業では、社長と部下の距離が近く、関係性がそのまま組織の空気に影響します。
そのため、強い決断を下すほど「反発されるのではないか」「冷たい社長だと思われるのではないか」という不安が生まれやすいのです。
私も後から振り返ってみると、判断の精度よりも、関係性を守ることを優先して意見を集めていた場面がありました。
意見を聞くことが目的化する危険性
この心理が強くなると、意見を聞く本来の目的がずれていきます。
本来は判断材料を得るための行為が、いつの間にか「納得してもらうため」「反対されないため」の手段に変わってしまうのです。
そうなると、社長はますます多くの意見を求め、結果として決断が遅れます。
意見を聞きたくなってしまう背景には、合理性と感情が混ざり合った、社長特有の立場の難しさがあると言えます。
その聞き方が、社長の決断力を下げている
「全員の意見を聞く」が生む判断の迷い
社長が部下の意見を聞く場面で、最も起こりやすいのが「できるだけ多くの人の意見を聞こう」とする姿勢です。
一見すると公平で丁寧ですが、この聞き方は決断力を確実に下げます。
意見が増えれば増えるほど、判断軸が広がり、どこに重心を置くべきか分からなくなるからです。
私自身も、関係者全員の声を集めた結果、判断に時間がかかり、最終的に無難な選択に逃げてしまった経験があります。
結論を持たずに聞くことの落とし穴
もう一つの問題は、結論を持たないまま意見を聞いてしまうことです。
社長が「どう思う?」と問いかけると、部下はそれぞれの立場から最適解を提示します。
しかし、その意見同士が食い違うのは当然です。
すると社長は、その場で調整役になり、判断の責任を無意識に分散させてしまいます。
結果として、「みんなで決めたようで、誰も決めていない」状態が生まれ、決断は先延ばしになります。
反対意見を避けるほど決断は弱くなる
嫌われたくない心理が強いと、社長は無意識に反対意見を避けようとします。
そのため、意見を聞く範囲を広げたり、何度も確認を重ねたりしますが、これは決断を強くするどころか逆効果です。
意見を集める行為が、判断の裏付けではなく、責任回避の手段に変わってしまう確証バイアスに変わることがあります。
聞き方が整理されていない限り、社長の決断力は意見の数に比例して下がっていきます。
決断力が高い社長が実践している「聞き方」
意見が増えすぎると「判断材料」はノイズに変わる
意見は多ければ多いほど良い、と考えがちですが、一定量を超えると状況は逆転します。
意見が増えすぎると、それは判断材料ではなくノイズになります。
私自身、関係者全員の声を集めた結果、重要な論点が埋もれ、かえって判断が難しくなった経験があります。
決断力が高い社長ほど、このノイズを意識的に減らそうとします。
聞き方を設計することで、ノイズは減らせる
ノイズを減らすために重要なのが、聞き方の設計です。
決断力が高い社長は、意見を聞く前に「今回の判断で必要な情報は何か」を整理しています。
- 事実確認なのか
- 選択肢の洗い出しなのか
- リスクの把握なのか。
目的が定まれば、不要な意見は自然と入ってこなくなります。
この一手間が、判断の質とスピードを大きく変えます。
意見は集めるものではなく、取りに行くもの
さらに、誰に聞くかも重要です。
全員に同じ問いを投げるのではなく、その判断に必要な視点を持つ人に限定して聞きます。
意見は集めるものではなく、判断に必要な材料を取りに行くものだと捉え直すことで、社長は嫌われる不安からも距離を取れます。
私自身、この聞き方に変えてから、決断後に迷いが残ることが明らかに減りました。
よくある質問(FAQ)
Q1. 部下の意見を聞かない社長は本当に嫌われますか?
必ずしも嫌われるとは限りません。問題になりやすいのは、意見を聞くかどうかよりも、判断の理由やプロセスが部下に見えず、納得感が生まれない状態です。
Q2. 意見を聞けば聞くほど決断が遅くなるのはなぜですか?
意見が増えすぎると判断材料ではなくノイズになり、論点が埋もれます。結果として判断軸がぼやけ、先延ばしや無難な結論に流れやすくなります。
Q3. 決断力が高い社長は、部下の意見をどう聞いていますか?
聞く前に目的を決め、誰に何をどこまで聞くかを限定します。意見を集めるのではなく、必要な判断材料を取りに行く聞き方をします。
Q4. 部下から嫌われたくない気持ちは悪いことですか?
自然な感情です。ただ、その不安が強いと、反対を避けるために意見を集めすぎて決断が弱くなります。感情は否定せず、聞き方を設計して影響を小さくします。
Q5. 明日からできる「聞き方」の改善は何ですか?
まずは質問を一つに絞ります。例:リスクだけ教えてください、代替案を2つ出してください。目的を一言で言える状態にしてから聞くと、決断が速くなります。



