社長が“裕福層マインド”を持つだけで会社の営業力が変わる理由
営業力を高めたい——それは多くの中小企業・ベンチャー経営者に共通する課題です。
しかし、営業マンのスキルや戦略だけを変えても、なかなか結果が出ないと感じたことはありませんか?
実は、営業力の強い会社にはある共通点があります。
それは「社長自身のマインド」が整っていること。
2025年2月にForbes(アメリカ版)で公開された記事では、高収入を実現する人々が持つ“裕福層マインド”こそが、営業力の源であると語られています。
本記事では、その具体的な6つの戦略を紐解きながら、社長がどのように思考を変えることで、会社全体の営業文化を根本から強化できるのかを詳しく解説します。
- 社長のマインドが営業力を決める:営業力の差は、社長の「営業=価値提供」という思考に起因します。
- 価格への自信が営業成績を左右する:「価格=価値の対価」と捉える姿勢が、営業全体に好影響を与えます。
- 営業は戦術ではなく“文化”にする:マインドセットを社内文化として根づかせることが営業強化のカギです。
はじめに:営業力を変える鍵は“社長のマインド”にある
多くの中小企業やベンチャー企業では、「営業力が弱い」「営業が苦手」という課題を抱えています。
そして、その原因を営業担当者の能力や行動力に求めがちです。
しかし、実際には“営業が苦手な会社”にはある共通点があります。
それは、営業に対する「社長自身のマインド」が弱い、またはズレているということです。
営業力の差は、単にテクニックやスクリプトの良し悪しでは生まれません。
根本的な違いは「営業文化」の有無です。
営業を「売り込む行為」と捉えるか、「価値提供」「課題解決」と捉えるか。
この認識の違いが、日々の行動や成果に大きく影響します。
そして、その営業観の源泉となるのが、ほかでもない社長のマインドです。
社員は、明文化されていなくても、経営者の価値観や発言から「会社としての営業スタンス」を無意識に感じ取ります。
価格交渉、提案の姿勢、クロージングの場面での判断基準。
これらすべてに、社長の考え方が影響を与えているのです。
営業力を強くしたいなら、まず見るべきは営業マンではなく、自分自身の“営業に対する認識”なのです。
営業で成功する人の思考法:高収入者の営業観とは
2025年2月、ビジネスメディア「Forbes」(アメリカ版)に掲載された「Selling Like A Millionaire: How High Earners Think About Sales」という記事で、ファイナンス専門家のメリッサ・ヒューストン(Melissa Houston)氏は、営業における高収入層の思考法について詳しく紹介しました。
彼女は、年収を大きく伸ばしている人々の共通点として、「営業=売ることではなく、助けること」というマインドの重要性を強調しています。
成功者たちは、営業を単なる“契約を取る行為”とは捉えていません。
むしろ、相手の課題を深く理解し、解決策を提供する“サービス”の一種であると考えています。
このマインドセットは、顧客へのアプローチだけでなく、商談時の姿勢や言葉選びにまで大きな影響を与えます。
営業を「助ける行為」として捉えることで、売り込み感がなくなり、顧客の信頼を得やすくなるのです。
また、彼らは「自己価値」に対する明確な認識を持っています。
自分が提供する商品やサービスには十分な価値があると信じているため、価格に対する罪悪感や不安を感じません。
値引きを必要以上に行わず、自信を持って価格を提示する姿勢が、顧客にも安心感を与えます。
さらに、拒絶に対して過剰に恐れない点も特徴です。
提案が断られることを「個人的な否定」と捉えず、単にニーズが一致しなかっただけと合理的に受け止めます。
このメンタルの強さが、行動量と継続性につながり、結果的に高収入へとつながっているのです。
裕福層マインドを持つ社長が実践する6つの営業戦略
① 営業とは“与える行為”であると再定義する
あなたが営業を「売ること」ではなく「顧客の課題を解決する行為」と捉え直すことで、組織全体の営業スタンスは劇的に変わります。
筆者が記事で紹介した高収入者たちの営業観も同様で、営業とは“サービス”であるという明確な意識がありました。
社長自身がこの視点を持ち、言語化して発信することで、営業マンは「売るため」ではなく「助けるため」に行動するようになります。
② お金に対する罪悪感を手放す
価格に自信が持てなかったり、高額な提案をためらったりしていませんか?
社長が「高く売る=悪いこと」という思い込みを持っていると、それが営業現場にも伝わり、値引き前提の営業文化が根づいてしまいます。
高収入者のように、お金は価値との正当な交換であり、感謝の印であると認識することで、社員にも健全なお金観が育まれます。
③ 自信を持って価格を提示する姿勢を示す
社長が価格に迷いや不安を見せれば、営業マンはそれを敏感に感じ取ります。
あなた自身が「この価格には十分な価値がある」と確信を持って提示し、それを納得できる言葉で語ることが、営業チームの価格提示にも自信を与えます。
値引きは信頼を損なうこともあります。
堂々と価値を伝える姿勢こそが、営業力を強くする鍵です。
④ 自社と自分の価値を信じる
営業マンに自信を持たせたいなら、まず社長であるあなたが、自社の提供価値と存在意義を誰よりも信じる必要があります。
あなたの信念やビジョンが言葉や態度に現れることで、社員は「この会社の一員であること」に誇りを持ちます。
営業はロジックだけでなく、“想い”が伝わることが重要です。
その原点は経営者の自己信頼にあります。
⑤ 拒絶を恐れない姿勢を示す
社長自身が「断られることは当然であり、悪いことではない」と公言し、行動で示すことが、営業マンにとっての大きな安心材料になります。
筆者が記事内でも、成功者たちは拒絶を「個人の否定」と捉えず、単なる選択の一つ(ニーズの有無)と受け止めていました。
恐れがなくなれば、提案数も増え、営業力は自然と底上げされます。
恐怖の壁を壊すのはトップの役割です。
⑥ セールスを“信頼と課題解決”と捉える
あなたが「営業とは顧客の信頼を得て、課題を一緒に解決していくパートナーシップである」と定義づけることで、営業チームの行動軸が大きく変わります。
信頼が前提となれば、顧客との関係構築に時間を惜しまなくなり、結果的に提案の精度も契約率も高まります。
営業は短期決戦ではなく、長期的な信頼構築のプロセスなのです。
社長の思考が営業マンの行動を変えるメカニズム
社長が日々どのように営業や価格、顧客対応について語っているかは、営業チームにとって強い影響力を持ちます。
言葉に出していない場合でも、社長の価値観や判断基準は、社内の空気や文化として自然に浸透し、現場での営業活動に反映されていきます。
営業力の強い会社は、社長のマインドが現場レベルまでしっかり“伝播”しているのです。
たとえば、社長が「うちは価格で勝負するしかない」と考えていれば、営業マンも価格交渉を前提に提案するようになります。
逆に「我々の提供価値は価格以上のものである」と信じていれば、その自信が現場の営業トークにも表れ、結果として強気な価格提示が可能になります。
社長の思考がそのまま“営業スタンスの雛形”となるのです。
この現象は、「マインドのコピー」とも言える現象です。
経営者の発する言葉や表情、態度は、営業マンの商談時のトーンや言い回し、プレゼン資料にまで影響します。
営業担当者が自信なさげに話す、あるいは値引きを先に口にするのは、単に個人のスキル不足ではなく、社長のマインドが伝播した結果であることも少なくありません。
とくに価格感や価値観は、組織文化として最も色濃く現れる部分です。
価格を堂々と伝えられる営業マンを育てたいのであれば、まず社長自身が「価格は価値の対価である」という信念を持ち、その考えを言語化し、繰り返し発信する必要があります。
営業力は、社長の思考の質と明確さによって育まれる文化なのです。
営業文化として6つの戦略を根づかせる方法
6つの営業戦略を単なるノウハウとして取り入れるだけでは、現場の行動や成果は変わりません。
大切なのは、それらを“戦術”ではなく“文化”として会社全体に根づかせることです。
営業文化とは、現場で自然にとられる言動や意思決定の背景にある価値観の集合体です。
これは一朝一夕で構築できるものではなく、社長の継続的な関与と発信が必要です。
まず重要なのは、会議の場での言語の使い方です。
売上や数字の話だけでなく、「どう価値を提供したのか」「どんな課題を解決できたか」といった視点を取り入れることで、営業の意識が変わります。
単なる報告会ではなく、価値提供の再認識を促す場としての営業会議に変えることが、文化づくりの第一歩です。
また、研修やOJTの場では、単にトークスクリプトを教えるのではなく、「なぜその言葉を使うのか」「その提案にどんな信念があるのか」を伝えることが重要です。
マインドに基づく説明が加わることで、社員は“なぜこのやり方をするのか”を納得し、再現性の高い行動へとつながります。
さらに、マネジメントにおいても営業力強化の鍵は「価値観の共有」にあります。
上司が部下に指導する際も、「数字が足りない」ではなく、「顧客の課題をどこまで理解できたか」に焦点を当てることで、現場に一貫した営業観が浸透します。
指導の軸を“成果”ではなく“思考”に置くことで、文化は育ちます。
最終的に大切なのは、社長自身が言語化した営業哲学を繰り返し発信することです。
「我々は何のために営業しているのか」「どう価値を届けるのか」といった問いに、明確な答えを持ち、それを組織全体に浸透させる。
その哲学が文化となり、個々の営業行動の判断基準になっていくのです。
6. まとめ:営業力の強い会社は、思考力の強い社長がつくる
営業力とは、単なるテクニックやノウハウではなく、会社全体に染み込んだ「考え方」の結晶です。そして、その源泉は間違いなく社長のマインドにあります。営業=信じる力 × 自信 × 覚悟。これは、Forbes記事で紹介された裕福層の営業観から導き出される本質でもあります。
今回紹介した6つのマインド——与える意識、お金への健全な感覚、自信ある価格提示、自己価値の確信、拒絶への耐性、信頼と課題解決への重視——は、いずれも高収入を得る人々が共有している思考法です。そして、それらは再現可能な「行動原則」として、社長の意志ひとつで組織に根づかせることができます。
営業が弱いのは、社員のせいではありません。社長の“思考の解像度”が、そのまま営業文化をつくっているのです。自社に営業改革を起こしたいと願うなら、まずは社長自身が営業に対する定義と姿勢を見直すことが最大の一手になります。文化は意図的につくるもの。その起点は、あなた自身です。
FAQ:よくある質問
Q1. マインドを変えるには何から始めるべき?
まずは「営業=価値提供である」と社長自身が定義し直すことから始めましょう。それを言語化し、社内に繰り返し発信することが第一歩です。
Q2. 現場主導でも営業文化は変えられますか?
基本的には難しいです。文化の核はトップの価値観です。社長が意図的に示さない限り、営業文化は現場に定着しません。
Q3. 小さな会社にも通用しますか?
むしろ小規模な組織ほど社長の影響力が大きく、マインドセットの転換がすぐに現場へ反映されやすい利点があります。
Q4. 言語化された営業哲学とは、どのようなものですか?
「なぜ私たちは営業するのか」「お客様にどんな価値を届けるのか」を一文で言えるようにすることが理想です。ミッションと営業がつながる言葉です。
Q5. マインドセットの社内浸透にはどれくらいの時間がかかりますか?
定着には3〜6か月が目安です。社長が継続的に語り、行動で示し続けることで徐々に文化として根づいていきます。
投稿者プロフィール

- エグゼクティブコーチ/経営コンサルタント
-
1968年生まれ。兵庫県出身。
玩具業界(商社)、映画業界を経て人材サービス業界で20年働く。
代表取締役として年商10億円台の人材サービス会社を70億円台まで成長させる。
経営の傍らで多くの経営者と交流し、中小企業の社長の立場でコーチング、コンサルティング実績を積む。
現在はエグゼクティブコーチ/経営コンサルタントとして活動中。
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