企業のAI人材の育成方法とは?成功する3つの具体ステップ

企業のAI人材の育成方法とは?成功する3つの具体ステップ

急速に進化するAI技術。

しかし、多くの中小企業やベンチャー企業にとって「AI人材の確保」は高いハードルです。

採用しようにも優秀な人材は大手企業に流れやすく、費用対効果も見合わないのが現実。

そこで注目されているのが、自社内でAI人材を「育てる」戦略です。

本記事では、成功企業の事例を参考にしながら、無理なく始められる3つの育成ステップをわかりやすく解説します。

AI導入に出遅れないための第一歩として、ぜひ実践してみてください。

この記事のポイント
  1. 社内のAI関心層を育成ターゲットにする:外部採用よりも、社内の「AIに興味がある人」を見つけて育てる方が効果的です。
  2. 短期集中研修で実務に直結したスキルを習得:2ヶ月のブートキャンプ形式で、現場課題を解決できるAIスキルを身につけます。
  3. 成功事例を社内で共有して文化にする:小さな成果を見える化し、共有することでAI活用が企業全体に広がります。

 

ステップ1:社内にいる“AI人材の卵”を見つける

「AIに関心がある人」を起点にする

AI人材の育成は、最初の一歩をどう踏み出すかが重要です。

多くの企業は「専門知識のある人がいない」と悩みますが、最初からAIに詳しい人など社内にはほとんどいません。

重要なのは「AIに関心を持つ人を見つけること」です。

きっかけは些細なもので構いません。

たとえば「業務が非効率だと感じる」「Excel集計に限界を感じている」など、日常業務への違和感からAIに興味を持つ人が多くいます。

まずは、アンケートや1on1、ワークショップのような場を使って、その“関心の芽”を拾い上げましょう。

文理問わず“やってみたい”を拾い上げる

AIと聞くと理系のイメージが強く、「うちは技術者がいないから無理」と決めつけてしまう経営者も少なくありません。

しかし、実際には文系出身の人材がAIプロジェクトを推進しているケースも多く見られます。

大切なのは、専門性よりも“やってみたい”という気持ちと現場感覚です。

特に現場の課題をよく理解している人材は、AI活用のアイデアが豊富で、実装後の効果も大きくなります。

技術よりも「問題意識」と「好奇心」を基準に人を選びましょう。

社内副業・横断チームで見える化

関心のある人材を見つけたら、次は“見える化”です。

おすすめは「社内副業制度」や「横断型プロジェクトチーム」の立ち上げです。

たとえば、通常業務の10〜20%の時間を使ってAIやデジタル施策に関わる機会を提供することで、実務を続けながらスキルアップが可能になります。

また、AIに関心のある人を一箇所に集めて勉強会やワーキンググループを形成すれば、社内での発信力も高まり、新たな関心層を巻き込む力になります。

AI人材の“見える化”が、企業の次の一手を加速させる起点になるのです。

ステップ2:短期集中型の研修で一気に育てる

短期集中型の「AIブートキャンプ」で急成長を促す

AI人材を育てるには、漫然とした自己学習に頼るのではなく、短期で集中的にスキルを習得させる「ブートキャンプ方式」が効果的です。

たとえば、2か月間通常業務から一時的に離れ、AIに特化した研修とプロジェクトに取り組むことで、短期間で高度なスキルと実務力が身につきます。

この期間中に扱う内容は、Pythonやデータ分析、機械学習の基礎など。

技術知識に加え、ビジネス視点での課題設定や解決提案の方法までを実践的に学びます。

学ぶだけでなく、「業務に活用すること」が明確なゴールであるため、意欲や責任感も自然と高まる仕組みです。

実務に根ざしたアウトプット=事例化が重要

このブートキャンプの最大の特徴は、「事例化をゴールとする」点にあります。

つまり、学んだ内容を実際の業務に落とし込み、自らAIを使った解決策やツールを開発することが求められます。

たとえば、紙の申請書を自動読み取りしてデータベース化するシステムや、定型報告書を自動生成する仕組みなど、すぐに実務で使えるものが多く生まれます。

このように成果が“目に見える”ことで、本人の自信とモチベーションが高まり、上司や他部署の理解と協力も得やすくなります。

場合によっては、研修後すぐにAI推進チームの一員として実プロジェクトへ参画することで、さらなる実務経験が積める好循環も生まれます。

社内展開を前提とした発信・共有の仕組み

育成効果をさらに高めるには、研修成果を社内で広く共有する仕組みが不可欠です。

たとえば、研修後には発表会を設け、プロジェクトの目的・手法・成果をプレゼン形式で報告してもらいます。

この場は単なる報告だけでなく、「他部門の課題解決にも応用できるヒントの宝庫」となります。

さらに、動画アーカイブや社内ポータルへの掲載、Slackでの事例共有なども活用することで、学びの波及効果が一気に拡大します。

個人の学習を、組織のナレッジとして活かす視点が重要です。

また、継続的な学習を促すために「次の挑戦機会」も明示しておきましょう。

例えば、研修修了者限定のアドバンス講座や、AIコンペ形式の社内チャレンジを用意することで、自主的なスキルアップの場を提供できます。

こうした段階的な設計が、AI人材の成長スピードと定着率を高め、企業にとって持続可能な競争力を生み出す土台となるのです。

ステップ3:小さな成功事例を社内文化にする

“隣の部署”の事例が最強の説得材料

AI活用の障壁の一つは、「自分たちには関係ない」「難しそう」という心理的距離です。

これを縮めるには、身近な成功事例を紹介するのが最も効果的です。

他社のケーススタディではなく、「同じ会社」「同じ職種」の人がAIを使って成果を出したという事実が、従業員の心を動かします。

たとえば、総務部門で導入された勤怠集計の自動化、営業部門でのレポート自動作成など、手軽な取り組みでも「意外とできる」という気づきを生みます。

こうした事例が新たな挑戦者を生む土壌になります。

成功事例を“可視化”し、共有する

小さな成果でも、社内でしっかり評価・可視化することが文化形成には不可欠です。

おすすめは「事例発表会」や「社内ポータルでの特集記事化」、あるいは「オープンバッジ」のようなデジタル証明書の発行です。

例えば、AI活用によって業務効率を20%改善した事例をグラフ付きで共有したり、プロジェクトのメンバーを社内報で紹介したりすることで、注目と称賛が集まりやすくなります。

評価されることで、チャレンジする空気が醸成されていきます。

“仲間づくり”と“横展開”の好循環をつくる

成功事例が出たら、それを起点に“仲間”を広げていくことが次の鍵です。

たとえばSlackにAI推進の専用チャンネルを作り、事例の背景や苦労話をカジュアルに共有することで、他部門のメンバーも自然に巻き込まれていきます。

あるいは、AIに関心のある社員を集めた横断型コミュニティを立ち上げ、定期的な勉強会を開催するのも良いでしょう。

このような仕組みがあることで、「次は自分もやってみたい」という前向きな連鎖が起き、AI活用が単発で終わらずに社内文化として定着していきます。

まとめ:育成こそが、企業のAI活用を成功へ導く鍵

AI人材の採用が難しい今、自社内で育成することは中小企業にとって現実的かつ戦略的な選択肢です。

関心のある人を見つけ、短期集中で育て、小さな成功を積み上げて共有する。

このサイクルを回すことで、AIは一部の専門家のものではなく、「現場の誰もが使えるツール」になります。

育成こそが、変化に強い企業文化の出発点です。

まずは社内の“やってみたい”という声を拾い上げ、小さな一歩から始めてみましょう。

私も以前の会社でWEBマーケティングを内製化する際に、経験者を採用することができずに「未経験、かつWEBマーケティングをやってみたい」人材を中途採用し、外部の協力企業に研修に活かせました。

その結果、数年後には数人のWEBマーケティング人材を確保し、業務の内製化を成功させることができました。

人事異動で興味関心がない人材をそのような取り組みに人選するよりも、興味関心がある人材を人選する方が期待する成果を得やすいのではないでしょうか?

よくある質問(FAQ)

Q1. AI人材の育成に特別な知識や学歴は必要ですか?

いいえ、必要ありません。

AI人材の育成は、AIへの関心や課題解決への意欲があればスタートできます。

文系出身者や現場職の社員でも、業務課題に向き合える人材なら大きく成長できます。

Q2. 研修のために通常業務を止めるのは難しいのですが、どうすればよいですか?

短期集中型の「ブートキャンプ」方式では、研修期間を2か月などに限定して実施します。

事前に業務を調整し、一定期間だけ研修に専念できるよう計画を立てることで対応可能です。

Q3. 小さな会社でもAI人材の育成は現実的でしょうか?

はい、むしろ中小企業ほど社内の課題が明確であるため、AIによる効果が実感しやすい環境です。

人材を外部から採用するのではなく、既存社員を育てるアプローチが効果的です。

Q4. AIを活用した成果はどう社内で共有すべきですか?

事例発表会やポータルサイト、Slackチャンネルなどを活用し、成果やプロセスを「可視化」して共有しましょう。

称賛や表彰を加えることで、社内のやる気と横展開が加速します。

Q5. 育成後の人材が離職するリスクが心配です

育成後も活躍できる場を用意し、評価制度やキャリアパスを整えることで定着率は向上します。

やりがいあるプロジェクトや裁量のある業務を任せることが重要です。

投稿者プロフィール

山下午壱
山下午壱エグゼクティブコーチ/経営コンサルタント
1968年生まれ。兵庫県出身。
玩具業界(商社)、映画業界を経て人材サービス業界で20年働く。
代表取締役として年商10億円台の人材サービス会社を70億円台まで成長させる。
経営の傍らで多くの経営者と交流し、中小企業の社長の立場でコーチング、コンサルティング実績を積む。
現在はエグゼクティブコーチ/経営コンサルタントとして活動中。