社長が営業(実務)をやめるだけで会社が成長する理由
多くの中小企業やベンチャー企業では、社長自らが営業や実務に深く関わることが当たり前とされています。
創業当初は限られたリソースの中で社長が現場に立ち、直接顧客と接することが会社の成長に貢献する場面も少なくありません。
しかし、会社が成長するにつれて、このスタイルが逆に企業の成長を妨げる要因になることが多いのです。
なぜなら、社長が実務に時間とエネルギーを取られることで、経営戦略の立案や組織全体の最適化といった本来の業務に集中できなくなります。
結果として、企業の成長に必要な大局的な視点や意思決定が遅れ、組織全体の停滞を招くのです。
欧米企業のマネジメント手法を例に挙げると、リーダーの役割は実務をこなすことではなく、社員が自律的に動ける環境を整え、成長をサポートすることにあります。
この考え方を取り入れることで、社長が現場から一歩引き、会社全体の成長を加速させることが可能になります。
本記事では、なぜ社長が実務をやめるだけで会社が成長するのか、その具体的な理由と方法を解説していきます。
- 社長が実務に関わりすぎると成長が止まる:社長が営業や日常業務に時間を取られると、戦略的な意思決定や経営に集中できず、企業の成長が停滞する
- サーバントリーダーシップで社員の主体性を育む:社員が自律的に働ける環境を整え、課題解決を支援することで、組織全体のパフォーマンスが向上
- 失敗を許容し心理的安全性を高める:失敗を挑戦の一部と捉え、社員が安心して意見を出せる職場を作ることで、創造性と成長意欲が促進
理由1:社長が実務に手を取られると本来業務ができなくなる
1. 戦略的視点の欠如
社長が営業や実務に深く関わると、一見して現場の状況を正確に把握でき、迅速な意思決定ができるように思えます。
しかし、これが企業の成長を妨げる要因になることは少なくありません。
特に中小企業やベンチャー企業では、社長が多忙な実務に追われることで、経営戦略の立案や新規事業開発といった本来の業務に時間を割けなくなります。
欧米の企業の事例では、マネジャーが細かい業務には関与せず、個々のメンバーの主体性を尊重しています。
マネジャーはチームの進捗を逐一管理するのではなく、全体の調整や障害(ブロック)の排除に集中しています。
社長も同様に、日々の実務から一歩引き、全社的な視点で経営戦略を考える時間を確保することが重要です。
2. 意思決定の遅延と業務効率の低下
社長が実務に関わりすぎることで発生するもう一つの問題は、意思決定の遅延です。
社長が現場の細かい部分まで関与することで、重要な経営判断が後回しになり、迅速な意思決定が難しくなります。
さらに、日々の業務報告や進捗管理に時間を取られることで、経営者としての本来の業務に集中できない状態が続きます。
日本企業では、特に「納期絶対主義」の文化が根強く、社長が現場に介入して問題を解決するケースが多く見られます。
しかし、このような状況は一時的な問題解決には役立つものの、社員の自主性を奪い、長期的な成長を阻害します。
対照的に欧米の企業では、納期よりも品質を優先し、進捗が遅れても「キミが納得する品質でやってくれ」と社員に任せる文化が根付いています。
これにより、社員の主体性と創造性が育ち、結果として高品質なプロダクトの開発につながるのです。
3. 組織の自立性が育たない
社長が実務を抱え続ける最大のリスクは、組織の自立性が育たないことです。
社長が全ての業務を管理し、指示を出す環境では、社員は自分で考え、行動する機会を失います。
この結果、社員の成長が停滞し、組織全体の生産性も低下します。
欧米の企業のように、社員が個人商店のように主体的に動ける組織を作ることで、社長は経営に集中できる時間を確保できます。
社員が自主的に課題解決に取り組むことで、企業全体の成長が促進され、社長はより大きな視点で組織の未来を描くことが可能になります。
最終的に、社長が実務に手を取られることで生じるのは、単なる時間の浪費ではなく、企業の成長機会の喪失です。
社長が本来の経営者としての役割に専念し、組織全体の成長を見据えた戦略的な行動を取ることが、企業の持続的な発展には不可欠なのです。
理由2:社長はサーバントリーダーシップに徹することが必要
1. サーバントリーダーシップとは何か?
サーバントリーダーシップ (PR)とは、リーダーが部下を支援し、最大限の力を発揮させるマネジメントスタイルです。
欧米の企業では、マネジャーが「応援団」のように振る舞い、部下の自主性を尊重しながら環境を整えています。
社長もこのスタイルを取り入れることで、社員が自律的に働き、組織全体の成長を促進できます。
このリーダーシップの核には、心理的安全性の確保が含まれています。
2. 社員の成長を促す環境づくり
マネジャーは、部下の進捗を細かく管理せず、障害(ブロック)の排除に集中します。
社長も、社員が直面する課題を取り除き、自分の業務に集中できる環境を作ることが求められます。
このとき、社員が安心して課題を共有できる心理的安全性が重要です。
また、「仕事を楽しんでいるか?」というシンプルな問いかけは、社員のモチベーションやメンタル面の把握に役立ちます。
定期的な1on1ミーティングを通じて、社員が抱える課題を早期に発見し支援することが、心理的安全性を高める手段になります。
3. 失敗を許容する文化が成長を生む
企業の成長には、失敗を挑戦の証と捉える文化が欠かせません。
マネジャーは部下の失敗に対して、「どこがうまくいかなかったのか」「次にどう改善するか」を話し合い、学びの機会を提供します。
これにより、社員は失敗を恐れずに挑戦し、創造性や問題解決能力を高めます。
この文化の根底には、心理的安全性があります。
社員がミスをしても責められず、意見を述べても否定されないと感じることで、積極的にアイデアを共有し、リスクを取る勇気が生まれます。
社長もこの文化を取り入れることで、社員が積極的に行動し、組織全体の成長が加速します。
最終的に、社長がサーバントリーダーシップを実践することで、社員の自主性と組織の成長が両立します。
実務に直接関わるのではなく、社員が最大限の力を発揮できる環境を整えることで、心理的安全性を高め、社長自身の負担も軽減され、企業の持続的な発展に繋がるのです。
社長が実務をやめるための具体的なステップ
1. 権限委譲と営業チームの育成
社長が実務を離れるためには、まず営業や業務の権限を社員に委譲することが重要です。
具体的には、営業チームに目標達成の責任を持たせ、成功体験を積ませることで自主性を育みます。
また、定期的な1on1ミーティングを通じて進捗を確認し、必要なサポートを提供することも大切です。
2. 業務プロセスの見える化と効率化
次に、業務プロセスを可視化し、社長が直接関与しなくても組織が機能する仕組みを作ります。
例えば、CRMツールやプロジェクト管理ツールを導入し、進捗状況を誰でも把握できる環境を整えます。
これにより、社長は全体を俯瞰しながら戦略的な判断に集中できるようになります。
3. 失敗を許容する文化の醸成
最後に、社員が自信を持って行動できるように、失敗を許容する文化を醸成します。
失敗を責めるのではなく、「何を学んだか」に焦点を当てることで、社員は挑戦を恐れず行動するようになります。
こうした環境を整えることで、社長が実務から離れても、組織は自律的に成長していきます。
まとめ:社長が実務を手放し会社が成長
社長が実務を手放すことで、組織は自律的に成長する環境を手に入れます。
サーバントリーダーシップを実践することで、社員は自主的に行動し、創造的なアイデアを生み出す力を発揮します。
これにより、組織全体の生産性とモチベーションが向上し、企業の競争力も強化されます。
さらに、心理的安全性の高い職場環境が社員の挑戦意欲を引き出し、新しいビジネスチャンスの創出に繋がります。
社長は戦略的な視点から経営に専念できるようになり、組織の未来を見据えた長期的な成長戦略を推進できます。
結果として、企業は持続的な発展と業績向上を実現し、社長自身の負担も大きく軽減されます。
投稿者プロフィール

- エグゼクティブコーチ/経営コンサルタント
-
1968年生まれ。兵庫県出身。
玩具業界(商社)、映画業界を経て人材サービス業界で20年働く。
代表取締役として年商10億円台の人材サービス会社を70億円台まで成長させる。
経営の傍らで多くの経営者と交流し、中小企業の社長の立場でコーチング、コンサルティング実績を積む。
現在はエグゼクティブコーチ/経営コンサルタントとして活動中。
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