社長が従業員と対話するための3つの話法

企業の成功は、社長と従業員の間にどれだけ強い信頼関係が築かれているかに大きく依存しています。

その信頼関係を育むために欠かせないのが「対話」です。

社長が従業員と効果的に対話をすることで、企業全体の士気が高まり、生産性も向上します。

しかし、忙しい日々の中で、従業員一人ひとりとじっくり向き合う時間を確保するのは簡単なことではありません。

また、社長としての立場から、従業員にどのように話しかけるべきか迷うこともあるでしょう。

そうした状況の中で、対話を通じて従業員の信頼を得るためには、効果的な話し方を身につけることが求められます。

本記事では、社長が従業員と対話する際に意識すべき「3つの話法」をご紹介します。

これらの話法を実践することで、従業員とのコミュニケーションが格段に向上し、企業全体の成長につながるでしょう。

【この記事のポイント】

話す目的を明確にする
目的がはっきりしていると、話の焦点が絞られ、従業員もその意図を正確に把握できる

従業員の視点に立つ
従業員がどのような状況に置かれているのかを理解し、その上でコミュニケーションを取る

短く明確な言葉で話す
シンプルで要点を押さえた話し方は、従業員にストレスを感じさせず、メッセージがより強く伝わる

 

1. 話す目的を明確にする

社長が従業員と話す際に、まず最初に意識すべきことは「話す目的を明確にする」ことです。

ビジネスの場では、社長の一言一言が従業員に大きな影響を与えるため、その対話が何を目指しているのかを明確にすることが非常に重要です。

話す目的が曖昧だと、話の内容が散漫になり、伝えたいメッセージが従業員に十分に伝わらない可能性があります。

たとえば、会議で新しいプロジェクトを立ち上げるとき、社長が従業員に「このプロジェクトを成功させるために何が必要か」と話し合いを持つ場合、その目的は「プロジェクトの成功に向けて具体的な行動計画を立てる」ことでしょう。

ここで、話す目的を事前に明確にしておくと、従業員との会話が目標に向かって効率よく進められます。

一方、目的が不明確なまま話を始めてしまうと、会話が脱線しがちで、結果的に本来の目的を達成するのが難しくなります。

また、話す目的を明確にすることで、社長自身も話の内容を整理でき、より効果的にコミュニケーションを取ることができます。

例えば、従業員のモチベーションを高めるための話し合いであれば、その目的に沿って具体的な成功事例を共有したり、今後の展望を明確に示したりすることが効果的です。

実際の場面では、次のような質問を自分に問いかけると良いでしょう。

「この対話を通じて、どのような結果を得たいのか？」

「この話の中で、従業員に最も理解してもらいたいことは何か？」

こうした自問を行うことで、話す目的を明確にし、それに沿った話を展開することができます。

さらに、話す目的を従業員に伝えることも大切です。

話し始める前に「今日は〇〇について話し合いたい」と目的を共有することで、従業員も話のゴールを理解しやすくなり、対話がスムーズに進みます。

たとえば、「今日の会議では、来期の売上目標を達成するための具体策を考えたいと思います」と話の冒頭で目的を示すことで、従業員はその話し合いに積極的に参加しやすくなるでしょう。

このように、社長が話す目的を明確にすることは、効果的な対話を行うための第一歩です。

目的がはっきりしていることで、従業員とのコミュニケーションがより焦点を絞ったものとなり、結果として、企業の目標達成に向けた一致団結が可能になります。

2. 従業員の視点に立つ

社長が従業員と効果的に対話を行うためには、「従業員の視点に立つ」ことが不可欠です。

社長と従業員は異なる立場や役割を持っており、当然、抱えている悩みや見ている景色も異なります。

社長の視点からだけで物事を考え、話を進めると、従業員との間に誤解や不満が生じることがあります。

従業員の視点に立つことで、彼らの感じていることや考えていることを理解し、それに合わせたコミュニケーションを取ることができます。

まず、従業員の視点に立つとは、彼らが直面している現実や感じているプレッシャー、持っているニーズや期待を理解することです。

たとえば、従業員が長時間働いて疲弊している状況で、さらなる業務を依頼する際、社長がその苦労を理解していないと、モチベーションの低下や不満を招きかねません。

しかし、従業員の立場に立ち、彼らの状況を理解した上で、「今、忙しいのは分かっているが、このプロジェクトは会社全体にとって非常に重要だ。できる限りサポートするから、力を貸してほしい」と伝えると、従業員も協力的な姿勢を取りやすくなります。

また、従業員の視点に立つことは、彼らが持つ知識や経験、スキルを尊重することでもあります。

社長が指示を出す際、従業員がすでに熟知していることや、逆に知らないことを把握することが重要です。

たとえば、新しいシステムの導入を考える場合、そのシステムが従業員の業務にどのような影響を与えるのか、彼らがどの程度の技術的な知識を持っているのかを理解することで、適切な説明やサポートが提供できます。

さらに、従業員の視点に立つということは、彼らの意見や感情に耳を傾けることを意味します。

従業員が感じている不安や不満、または提案や意見を無視するのではなく、積極的に聞き入れる姿勢を持つことで、彼らは自分が組織に貢献していると感じるようになります。

これは信頼関係の構築にも大きく寄与します。

たとえば、業務改善のアイデアを従業員から募り、その中から実際に取り入れたアイデアがあれば、それを公に認め、感謝の意を伝えることで、従業員のモチベーションを大きく向上させることができます。

従業員の視点に立つことは、彼らの立場や感情を理解し、共感することです。

これにより、従業員は社長が自分たちを理解し、信頼していると感じるようになり、結果として、組織全体のコミュニケーションが円滑になり、業務効率も向上します。

社長がこの視点を持って対話を進めることで、従業員の信頼を獲得し、より強固なチームを築くことができるのです。

3. 短く明確な言葉で話す

社長が従業員と対話する際には、「短く明確な言葉で話す」ことが重要です。

特にビジネスの現場では、時間が限られており、複雑な問題について効率的に議論する必要があります。

そのため、長く複雑な説明や曖昧な表現を避け、簡潔で要点を押さえた話し方を心がけることが、効果的なコミュニケーションに繋がります。

まず、話を簡潔にするためには、一つの文に盛り込む情報量を制限し、短い文章を使うことが大切です。

例えば、長い一文で複数のポイントを含めると、聞き手は情報を処理しづらくなり、結果として理解が浅くなってしまいます。

次のように文章を分けて話すと、従業員にとって情報が明確に伝わりやすくなります。

悪い例:
「今期の目標達成に向けて、各部署でさらに努力をお願いしたいですが、特に営業チームには新規顧客開拓を強化してもらいたいので、そのために今後の戦略を一緒に考えていきましょう。」

 

良い例:
「今期の目標達成に向けて、各部署にさらに努力をお願いしたいと思います。特に営業チームには、新規顧客開拓を強化してもらいたいと考えています。今後の戦略については、一緒に考えていきましょう。」

このように、短く区切ることで、従業員は話の内容を一つ一つ理解しやすくなります。

また、短い文章にすることで、自然に「間（ま）」が生まれます。

この間は、従業員が話の内容を咀嚼（そしゃく）し、自分の意見を整理するための時間となり、対話が一方通行ではなく双方向のものとなります。

次に、明確な言葉を使うことも重要です。

専門用語や曖昧な表現を多用すると、従業員が理解できない場合があり、誤解や混乱を招く可能性があります。

特に新しいプロジェクトや方針について話すときは、従業員がすぐに理解できる言葉を選ぶことが大切です。

たとえば、「KPI」や「シナジー効果」といったビジネス用語をそのまま使うのではなく、「重要な指標」や「協力による相乗効果」といった分かりやすい言葉に置き換えることで、従業員がすぐに内容を把握しやすくなります。

さらに、話の主旨を明確にするために、要点を最初に述べるというテクニックも有効です。

話の冒頭で、伝えたい結論や重要なポイントを簡潔に示すことで、従業員はその後の詳細な説明をより理解しやすくなります。

例えば、「今日は、来期の計画について3つの重要なポイントをお話しします」という形で要点を示した上で、その後に具体的な内容を説明すると、話が整理され、従業員も聞き取りやすくなります。

短く明確な言葉で話すことは、情報を正確に伝えるための基本的な技術ですが、同時に社長としての信頼感を高めることにも繋がります。

言葉が端的で分かりやすいほど、従業員は社長のメッセージを正確に理解し、行動に移すことができるでしょう。

このようなコミュニケーションが習慣化すれば、組織全体の動きが一層円滑になり、企業の成長に繋がります。