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山下午壱
1968年生まれ。兵庫県出身。 玩具業界(商社)、映画業界を経て人材サービス業界で20年働く。 代表取締役として年商10億円台の人材サービス会社を70億円台まで成長させる。 現在はエグゼクティブコーチ/経営コンサルタントとして活動中。
社員の主体性が育たない理由|Amazon週5日出社に学ぶ管理強化の限界

Amazonが週5日出社へ戻したことは、多くの経営者にとって分かりやすい事例です。会社が方針を決め、制度として実行すれば、社員の行動は変えられます。実際、※1Amazonは2024年9月に週5日出社の方針を発表し、その後、出社を基本とする体制へ戻しました。

ただし、ここで考えたいのは、出社が良いか悪いかではありません。社員を会社の方針に従わせることと、社員の主体性を育てることは同じなのか、という点です。中小企業でも、管理を強めれば社員は動くように見えることがあります。しかし、それが本当に自分で考えて動く状態なのかは、別に考える必要があります。

記事3行まとめ
  • ✅社員の主体性は管理強化では育たない
  • ✅社員が動かない原因は判断基準の不在
  • ✅社長は命令より判断基準を示すべき

 

第1章 Amazon週5日出社は何を示したのか

Amazonの週5日出社は、企業の方針が社員の行動を変える力を持っていることを示しました。出社を求めれば、社員は出社します。ルールになれば、多くの社員はそれに従います。評価に関わることであれば、なおさらです。

この意味では、会社が社員を動かすことはできます。中小企業でも同じです。社長が報告を求め、確認を増やせば、社員の行動は変わります。

しかし、行動が変わったことと、主体性が育ったことは同じではありません。社員の身体を会社に戻すことと、社員の思考を前向きに動かすことは別の話です。経営者が見るべきなのは、社員が動いたかだけでなく、なぜ動いたのかです。

第2章 命令で社員は動くが、主体性は育たない

行動を変えることと、考え方が変わることは違う

社員は、会社のルールや社長の指示によって行動を変えます。締切を決めれば提出します。会議を設定すれば参加します。報告を求めれば報告します。組織である以上、一定のルールや指示は必要です。

しかし、命令によって行動した社員が、必ずしも仕事の意味を理解しているとは限りません。むしろ、管理が強くなるほど、社員は「何が正しいか」よりも「社長に怒られないか」を基準にしやすくなります。

従わせる力と、育てる力は違う

社長が強く指示すれば、社員は従います。けれども、その状態が続くと、社員は自分で考えるよりも、社長の正解を探すようになります。私はここに、管理強化の限界があると考えています。従わせることはできても、それだけでは主体性は育たないのです。

第3章 管理を強めるほど、社員は考えなくなる

管理が強い会社ほど、社員は失敗を避ける

中小企業では、社長が現場をよく見ています。人数が少ないため、社員の仕事ぶりも見えやすくなります。そのため、社長はつい細かく指示したくなります。私も経営者の方と話していると、「任せたいけれど、任せると不安になる」という声を聞くことがあります。

その気持ちはよく分かります。会社の結果責任を負うのは社長だからです。しかし、失敗を防ぐために管理を強めすぎると、社員は挑戦よりも安全を選びます。間違えないこと、叱られないこと、余計なことをしないことが優先されます。

社長が答えを出しすぎると、社員は待つ

社長が毎回答えを出していると、社員は自分で判断するよりも、社長の判断を待つようになります。すると社長は「なぜ自分で考えないのか」と感じ、さらに細かく管理します。この繰り返しが、指示待ちの組織をつくります。

第4章 社員の主体性を奪う会社で起きていること

私が中小企業の現場で感じるのは、「社員に主体性がない」と悩む社長ほど、実は社員が判断する余白を小さくしていることがあるという点です。社員に任せたいと言いながら、判断基準や役割を伝えていない。自由にやってほしいと言いながら、結果が違うと細かく修正する。この状態では、社員は動きたくても動けません。

主体性とは、好き勝手に動くことではありません。会社の方向性を理解し、自分の役割の範囲で判断し、結果に責任を持って行動することです。だからこそ、社員に主体性を求める前に、社長は「何を基準に判断すればよいのか」を示す必要があります。

社員が動かない原因を社員の性格や意欲だけに求めると、解決策は管理の強化に向かいます。しかし、本当に必要なのは、社員が考えられる前提を整えることです。

第5章 社長の役割は管理ではなく、判断基準を示すこと

放任ではなく、判断基準を渡す

社員の主体性を育てるには、単に管理を減らせばよいわけではありません。何も決めずに任せるだけでは、社員は迷います。それは主体性ではなく、放任に近い状態です。

必要なのは、社長が会社としての判断基準を明確にすることです。何を大切にするのか。どこまで社員に任せるのか。どの結果に責任を持つのか。ここを示すことで、社員は初めて自分で考えられるようになります。

社員が動く会社には、社長の基準がある

社員が自ら動く会社には、必ず基準があります。細かい命令ではなく、判断の軸があります。社長が毎回答えを出すのではなく、社員が自分で答えを出せるように、考える土台を渡しているのです。

第6章 社員の主体性は、判断基準を示したときに育ち始める

Amazonの事例から考えるべきことは、出社が良いか悪いかだけではありません。リーダーが何を目的に社員を動かそうとしているのかです。自律性を支える関わり方は、※2協力や前向きな行動を引き出しやすいという研究もあります。

中小企業の社長にとって大切なのは、社員を監視することではなく、社員が自分で判断できる環境をつくることです。社員に任せるとは、丸投げすることではありません。判断基準を示し、任せる範囲を明確にし、その範囲で考えさせることです。

社員の主体性は、管理を強めるほど育つものではありません。社長がすべてを決めるのをやめ、社員が判断できる範囲と基準を示したときに育ち始めます。社員が動かないと感じたときこそ、私は「管理を増やすべきか、判断基準を示すべきか」を考え直すことが大切だと思います。

参照元

  • ※1 Amazon「CEO Andy Jassy's latest update on Amazon's return-to-office and manager team ratio」
  • ※2 The University of Sydney「How to be a better manager, parent and teacher」

よくある質問(FAQ)

Q1. 社員の主体性が育たない一番の原因は何ですか?

社員の主体性が育たない原因は、社員の意欲不足だけではありません。社長が判断基準を示さないまま細かく管理すると、社員は自分で考えるよりも、社長の正解を待つようになります。

Q2. 管理を強めれば社員は動くようになりますか?

管理を強めれば、社員の行動を一時的に変えることはできます。しかし、それは主体性が育った状態とは限りません。命令や確認で動くことと、自分で判断して動くことは別の問題です。

Q3. Amazonの週5日出社から中小企業の社長は何を学ぶべきですか?

Amazonの週5日出社から学ぶべきことは、出社の是非そのものではありません。会社の方針で社員を動かすことはできても、それだけで社員の主体性が高まるわけではないという点です。

Q4. 社員に任せることと放任は何が違いますか?

社員に任せるとは、何も決めずに丸投げすることではありません。会社としての判断基準、任せる範囲、求める結果を明確にしたうえで、その範囲で社員に考えさせることです。

Q5. 社員の主体性を育てるために社長が最初にすべきことは何ですか?

社長が最初にすべきことは、管理を増やすことではなく、判断基準を示すことです。何を大切にし、どこまで任せ、どの結果を求めるのかを明確にすることで、社員は自分で考えやすくなります。

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