Author profile
山下午壱
1968年生まれ。兵庫県出身。 玩具業界(商社)、映画業界を経て人材サービス業界で20年働く。 代表取締役として年商10億円台の人材サービス会社を70億円台まで成長させる。 現在はエグゼクティブコーチ/経営コンサルタントとして活動中。
「有能な働き者」の社長が会社を成長させられない理由|ゼークトの組織論

有能で、真面目で、責任感のある社長ほど、会社の成長を止めてしまうことがあります。これは、社長の能力が低いという話ではありません。むしろ能力が高いからこそ、自分で動き、自分で判断し、自分で解決してしまう。その結果、社員が考える場面が減り、会社全体の力が育ちにくくなるのです。今回はゼークトの組織論を手がかりに、「有能な働き者」の社長がなぜ会社を成長させられないのかを考えてみます。

記事3行まとめ
  • ✅社長の働きすぎが社員の成長を止める
  • ✅ゼークトの組織論の本質は役割の違い
  • ✅社長の仕事は人が育つ構造づくり

 

第1章 ゼークトの組織論とは

ゼークトの組織論

ゼークトの組織論では、人を「有能か無能か」「働き者か怠け者か」の組み合わせで4つに分けて考えます。その中で、指揮官に向いているとされるのは「有能な怠け者」です。反対に「有能な働き者」は、能力も行動力もある一方で、自分で動きすぎるため、指揮官には向きにくいとされます。

もちろん、これは人を単純に分類するための考え方ではありません。経営に置き換えるなら、自分でできることと、組織を動かすことは別の能力だという示唆です。社長が現場で優秀であることは大きな強みです。しかし、その強みをそのまま経営に持ち込むと、会社の成長を妨げることがあります。

第2章 「有能な働き者」の社長が起こしやすい問題

自分でやった方が早い、という判断

中小企業では、社長が一番仕事を分かっていることがよくあります。営業も、商品も、顧客対応も、資金繰りも、最終的には社長が見ている。私自身も、多くの経営者と話す中で「説明するより自分でやった方が早い」という言葉を何度も聞いてきました。

この判断は、短期的には間違っていません。社長が動けば早く片づくことは多いです。品質も保てます。お客様への対応も速くなります。しかし、その状態が続くと、社員は自分で考えるより、社長の判断を待つようになります。

社員の考える機会を奪ってしまう

社長が最終的に全部確認し、細かい判断まで行ってしまうと、社員は失敗しにくくなります。その代わり、考える機会も減ります。考えない社員が増えるのではなく、考えなくても仕事が進む構造を、社長自身が作ってしまうのです。

有能な働き者の社長ほど、この構造に気づきにくいです。自分は会社のために頑張っている。社員を助けている。お客様に迷惑をかけないようにしている。そう考えるからこそ、手を出し続けてしまいます。

第3章 社長が頑張るほど、組織は弱くなる

社員が育たない理由

社員が育たない会社では、能力の問題だけが原因ではありません。社員が責任を持つ前に、社長が判断を行っていることがあります。社員が迷ったとき、社長がすぐに答えを出す。失敗しそうなとき、社長が先に直す。これを続けると、社員は責任を持つ経験を積めません。

人は、任された範囲で考え、決め、結果を受け止めることで成長します。ところが、社長が頑張りすぎる会社では、その過程が途中で止まります。社員は作業者としては動けても、判断する人にはなりにくいのです。

責任の所在が社長に集中する

社長が尻拭いを続ける会社では、責任の所在も曖昧になります。社員は「最後は社長が見てくれる」と思い、社長は「自分が見ないと危ない」と思う。お互いに悪気はありません。しかし、その関係が続くほど、会社は社長一人に依存していきます。

会社が小さいうちは、それでも回るかもしれません。しかし、社員が増え、仕事が増え、顧客が増えると、社長一人の処理能力には必ず限界が来ます。社長が頑張るほど会社が回る状態は、裏を返せば、社長が止まると会社も止まる状態です。

第4章 「有能な怠け者」がリーダーに向いている理由

ゼークトの組織論でいう「有能な怠け者」は、単に怠ける人ではありません。無駄に自分で動かず、全体を見て、人が動く仕組みを考える人です。自分が全部やらなくても成果が出るように、役割を決め、判断基準を整え、任せる範囲を明確にします。

社長に必要なのは、誰よりも長く働くことではありません。社員が自分の役割を理解し、考え、動ける状態を作ることです。もちろん、任せることには不安があります。失敗も起こります。それでも、社長がすべてを握ったままでは、社員は本当の意味で仕事を引き受けることができません。

第5章 社長の役割は、実務ではなく構造をつくること

社長が手放すべき仕事

社長が手放すべきなのは、責任そのものではありません。細かい実務や、社員が考えるべき判断を、少しずつ手放すことです。たとえば、毎回社長が答えを出すのではなく、社員に案を持ってこさせる。ミスをすぐに直すのではなく、なぜそうなったのかを考えさせる。こうした積み重ねが、組織を育てます。

社長が持ち続けるべき責任

一方で、社長が持ち続けるべき責任もあります。それは、会社の方向性を示すこと、役割を決めること、判断基準を作ることです。成長しない会社ほど、社長が細部まで抱えています。成長する会社ほど、誰が何を決めるのか、どこまで任せるのかが整理されています。

社長が「自分でやる人」から「任せて成果を出させる人」に変わると、会社の見え方も変わります。社員の未熟さだけを見るのではなく、社員が育つ構造があるかどうかを見るようになります。

第6章 まとめ|社長が一番働く会社から、社員が成長する会社へ

「有能な働き者」の社長が悪いわけではありません。会社を守るために頑張ってきたからこそ、今の会社があります。ただ、会社を次の段階へ進めるには、社長の役割も変わる必要があります。

社長が現場の主役であり続ける会社では、社員は脇役のままです。社長が考え、社長が決め、社長が責任を取る。この形は安心に見えますが、長く続くと会社の成長を止めます。

会社を成長させるために必要なのは、社長が一番働くことではありません。社員が考え、動き、責任を持てる組織をつくることです。そのためには、社長がすぐに手を出したくなる場面で、一度立ち止まることが大切です。社長の仕事は、仕事を抱えることではなく、社員が成長する構造をつくることなのです。


よくある質問(FAQ)

Q1. ゼークトの組織論とは何ですか?

ゼークトの組織論とは、人を「有能・無能」と「働き者・怠け者」の組み合わせで4つに分類する考え方です。組織において、どのタイプがどの役割に向いているかを考える際の参考として使われます。

Q2. なぜ「有能な働き者」の社長は会社を成長させにくいのですか?

有能な働き者の社長は、自分で判断し、自分で動き、自分で解決してしまいやすいからです。その結果、社員が考える機会を失い、社長に依存する組織になりやすくなります。

Q3. 「有能な怠け者」がリーダーに向いている理由は何ですか?

ここでいう怠け者とは、単に仕事をしない人ではありません。無駄に自分で抱え込まず、全体を見て、人が動く仕組みをつくれる人を指します。経営者には、この視点が重要です。

Q4. 社長が仕事を手放すと、会社の品質は下がりませんか?

いきなり丸投げすれば品質は下がる可能性があります。大切なのは、判断基準や役割を明確にしたうえで、社員に考えさせる範囲を少しずつ広げることです。

Q5. 社員が育つ会社にするために、社長は何を意識すべきですか?

社長がすぐに答えを出すのではなく、社員に考えさせ、決めさせ、結果を受け止めさせることが重要です。社長の役割は、実務を抱えることではなく、社員が成長する構造をつくることです。

「経営者思考」オンライン講座 
「経営者思考」オンライン講座 受講イメージ

1回約3分×3日の動画講座

「経営者思考」オンライン講座

成長企業経営者の思考を学ぶ

「なぜ毎日出社しない社長の会社は業績が好調なのか?」

成長を目指す経営者が知っておくべき3つの戦略