
経営をしていると、誰かに相談したいと思う場面は少なくありません。売上、人材、組織、採用、資金繰り。正解が一つではない問題ほど、一人で考え続けても答えが出ないことがあります。
それでも経営者の中には、「社長なのだから自分で決めなければならない」「人に聞くのは自分の能力不足を認めるようで嫌だ」と感じる人がいます。
私自身も、経営者は自分で答えを出すものだと考えていた時期がありました。しかし今は、相談することも経営者に必要な能力の一つだと考えています。
- ✅経営者が相談できない原因は「自分で決める」という思い込み
- ✅相談は弱さではなく、経営判断の質を高める行動
- ✅人の視点を借り、最後は自分で決めることも経営能力
第1章 「社長なのだから自分で答えを出すべき」という思い込み
経営者には最終的な意思決定の責任があります。だからこそ、「最後は自分で決める」という姿勢は必要です。しかし、それと「何でも自分一人で考える」は同じではありません。
特に中小企業では、社長自身が営業も採用も資金繰りも経験しながら会社をつくってきたケースが多くあります。自分で考え、自分で動き、問題を解決してきた経験があるほど、「自分で何とかすること」が経営者の能力だと思いやすくなります。
私も経営者として、まず自分で考えることは大切だと思っています。ただ、自分で考えることと、他人の力を借りないことは別です。すべてを自分だけで考えようとすると、自分の経験や知識の範囲から出られなくなることがあります。
第2章 成功する人ほど「助けを求める」|ダックワース教授の研究
「やり抜く力(GRIT)」の研究で知られる心理学者アンジェラ・ダックワース教授は、成功する人について考える中で、必要なときに周囲へ助けを求めることの重要性を指摘しています。
ダックワース教授が伝えているのは、成功する人は何でも一人で乗り越えているわけではない、ということです。むしろ、自分だけでは解決できないことがあれば人に助けを求め、必要な知識や支援を得ながら前に進んでいます。努力や粘り強さだけでなく、周囲の力を借りることも、成果を生み出すうえで大切な行動だという考え方です。
私は、この考え方は経営にもそのまま当てはまると思います。経営者は意思決定をする人ですが、すべての答えを知っている人ではありません。自分が知らないことや、自分には見えていないことがあると認めたうえで他人の視点を取り入れる。その方が、経営判断の選択肢は広がります。
経営者が人に相談することは、能力が足りないことの証明ではありません。自分一人の知識や経験だけに頼らず、より良い判断をするために必要な情報や視点を取りにいく行動だと、私は考えています。
第3章 なぜ経営者は相談することを「能力不足」と感じるのか
「自分で解決すること」が評価されてきた経験
経営者になる人の多くは、これまで自分で考え、行動し、結果を出してきた人です。その成功体験があるからこそ、人に頼るよりも先に「自分で解決しなければ」と考えます。
ところが会社が成長すると、問題の種類も増えていきます。営業が得意な社長でも、人事や財務、組織づくりまですべてに詳しいとは限りません。それでも過去の成功体験を基準にすると、相談することを「できない人がすること」のように感じてしまいます。
社長になると「わからない」と言いにくくなる
もう一つは、立場の問題です。社員から判断を求められる立場になるほど、「わからない」と言いにくくなります。私も経営者の方と話していると、「こんなことを相談してよいのか」と前置きされることがあります。しかし、経営には最初から正解が分かっている問題の方が少ないのではないでしょうか。
わからないことがあることと、経営能力がないことは別です。むしろ、何が分からないのかを自分で認識できることが、より良い判断の出発点になります。
第4章 相談することは「答えを教えてもらうこと」ではない
私は、経営者の相談を「答えを教えてもらうこと」だとは考えていません。経営の最終判断を他人に任せてしまえば、それは経営者としての役割を放棄することになります。
相談する価値は、自分とは違う視点を入れることにあります。「自分はこう考えているが、見落としていることはないか」「この前提そのものが間違っていないか」「別の立場から見るとどう見えるのか」。こうした問いを他者との対話によって確認することで、自分一人では気づかなかった考え方が見えてきます。
私自身も、誰かと話しているうちに自分の考えが整理されたり、言葉にした瞬間に「少し違うな」と気づいたりすることがあります。相談の価値は、相手が正解を持っていることではありません。自分の思考を外に出すことで、自分自身の考えを見直せることにあります。
第5章 相談できることも経営者に必要な能力だと私は思う
会社が小さいうちは、社長一人の経験や判断力で乗り切れる場面も多くあります。しかし会社が成長するほど、社長が経験したことのない問題は増えていきます。
そのときに必要なのは、「自分が全部知っている状態」をつくることではありません。必要な情報を集め、適切な人の意見を聞き、異なる視点を取り入れたうえで、自分で判断することです。
私は、この一連の行動そのものが経営能力だと思っています。相談することは、自分の判断を誰かに委ねることではありません。自分の判断の質を上げるために、使える知識や視点を増やすことです。そう考えれば、人に相談することと経営者として自立していることは矛盾しません。
第6章 経営者に必要なのは、自分以外の視点を持つこと
経営者には、最後は自分で決めなければならない場面があります。だからこそ、その前段階では一人で考え込まないことが大切です。
人に相談することを「自分では解決できないから」と考えるのではなく、「自分だけでは見えないものを見るため」と考えてみてはどうでしょうか。
経営者の能力とは、何でも一人でできることではないと私は思います。自分の限界を理解し、必要なときに人の知恵を借り、それでも最後は自分で決める。その姿勢こそ、会社が社長一人の経験を超えて成長するために必要なのではないでしょうか。
よくある質問(FAQ)
Q1. なぜ経営者は人に相談できないのでしょうか?
「社長なのだから自分で答えを出すべき」「人に頼るのは能力不足だ」という思い込みが一つの理由です。特に、自分で考えて問題を解決してきた経験が多い経営者ほど、自力で解決することを重視しやすくなります。
Q2. 経営者が人に相談するのは能力不足なのでしょうか?
相談することと能力不足は別です。自分だけでは見えない情報や視点を取り入れ、より良い判断につなげることも経営能力の一つです。大切なのは、相談した相手に判断を任せるのではなく、最後は経営者自身が決めることです。
Q3. 成功する人ほど人に助けを求めるのでしょうか?
「やり抜く力(GRIT)」の研究で知られるアンジェラ・ダックワース教授は、成功する人について考える中で、必要なときに周囲へ助けを求めることの重要性を指摘しています。何でも一人で解決することだけが、成功につながる行動ではありません。
Q4. 経営者はどのようなことを相談すればよいのでしょうか?
答えそのものを求める必要はありません。「自分の考えに見落としはないか」「前提そのものが間違っていないか」など、自分とは違う視点を得るために相談することが重要です。対話することで、自分の考えが整理されることもあります。
Q5. 経営者が相談するときに大切なことは何ですか?
相談相手の意見をそのまま正解にしないことです。異なる意見や知識を取り入れたうえで、自分の頭で考え、最後は自分で決める。そのために他者の視点を活用することが、経営者に求められる相談のあり方だと考えます。



